10-3-4 PDF
重症急性膵炎(PDF)
アフェレシスの方法
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アフェレシスの目的
腎毒性物質・アルブミン結合物質除去
推奨レベル
2C
カテゴリー
III
文献的報告数
RCT
CT
CS
CR
0
0
1
1
疾患概念
急性膵炎は,膵機能の破綻による膵臓の急性炎症である.成因はアルコール,胆石,高トリグリセライド血症(別記)などである.重症急性膵炎では他の隣接臓器に影響を与え,腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:ACS)を来す.さらに炎症性サイトカイン等の液性因子過剰産生により,血管透過性亢進,遠隔臓器障害を併発し,ICUにおける全身管理を必要とし死亡率,合併症率も高い.壊死部はしばしば被包化膵壊死(walled-off pancreatic necrosis:WON)を形成し,続発性膵感染が生命予後を左右する.
最新の治療状況
重症急性膵炎(severe acute pancreatitis:SAP)ではCHDFに保険適用があり,一連につき概ね8回を限度に算定できる.
アフェレシスの根拠
SAPに対するplasma filtration with dialysis(PDF)でのIL-6のクリアランスは10.1mL/min,BUNは約20であり,MOFへの発展予防ができ,救命し得ている.ケミカルメディエーター除去による病態改善を考慮する場合は膜孔の大きいEC-4Aを用いる.重症度が高い症例では48時間を1クールとしたcontinuous plasma exchange with dialysisの適応を考慮する.
施行上のポイント
・一般的なCHDF回路や血液浄化装置のみを使用することが望ましい.それら以外に新たに輸液ポンプを設置して補充液ラインなどとすることはポンプ制動のずれにより水分出納を精密に管理することができず,バランスが崩れる恐れがあるので推奨しない.腎不全を合併するなどにより除水が必要な場合は通常のCHDFと同様に設定する. ・SAPにおいては血液製剤を使用することから,現時点では適応はタンパク合成能の低下した症例のみに限定される.そのため,凝固因子の低下が認められない症例ではFFPの代わりにアルブミン溶液で置換する. ・Dポート接続など医療安全の面など各施設の倫理員会を通じた対応を行っておくほうが得策と思われる.
施行回数・終了のめやす
8時間×3コースでCRP,LDHは速やかに低下した報告がある.SAPの加療に準じて評価し,改善の傾向がみられ始めたところで実施回数を漸減中止もしくは半日程度中止して経過観察し再増悪の場合は再導入を検討するのがよい.
保険適用* 無
文 献
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