10-2-7 PDF
急性薬物中毒(PDF)
アフェレシスの方法 |
PDF |
アフェレシスの目的 |
腎毒性物質・アルブミン結合性・アルブミン非結合性中毒物質の除去 |
推奨レベル |
2C |
カテゴリー |
III |
文献的報告数 |
RCT |
CT |
CS |
CR |
0 |
0 |
2 |
4 |
疾患概念
・薬物の過剰摂取や過剰投与などにより中毒症状を起こしている.
・中毒物質が原因で腎不全や肝不全などの臓器障害が起きている.
最新の治療状況
①DHP,②PE,③CHDF
アフェレシスの根拠
・一般的に分子量が除去スペクトラム内にあり,分布容量が小さく,タンパク結合率が低い物質ほど除去されやすいが,タンパク結合率が高い物質については,血液透析では除去できない.そこで,アルブミン結合物質と腎毒性物質の除去を目的としてplasma filtration with dialysis(PDF)療法を行うことも可能である.
・EC4Aを用いたPDFについては選択的PE(selective PE:SePE)として実施するよりも効率に薬物を除去できる可能性がある.PDF法の変法であるplasma exchange with dialysis(PED)法(濾過透析ではなく透析に特化したPDF療法)でEC-4Aを用いて180分間の実験系で,リチウムではSePEと同等,フェノバルビタールではDHP-1と同様に効率的に除去できた.すなわち,SePEとDHPの両者の長所を併せたような効果が得られた.
・自殺企図によるアセトアミノフェンの大量服用による急性肝不全に対して従来型のPEとHDFを7日間併用して回復した.
・漢方薬中毒2例とアルコール性肝炎1例に対して,PDF 3~12回,CHDF 1~11回の併用でいずれも回復している.
・ベラパミル中毒に対して,アルブミン透析を1回施行し,改善の報告がある.
施行上のポイント
・病因物質の分子量と分布容量,タンパク結合率に基づいたモダリティ選択が必要である.タンパク結合率が高い物質は,アルブミン結合物質除去を目的としたモダリティ[PED/PDF,PE(従来型,EC4AによるSePE)]の選択が重要となる.特に病因物質が不明な場合や複数の物質を服用している場合はEC4AによるPEDが推奨される.
・凝固因子の補充が不要な場合はアルブミン溶液で置換することができる.
・Dポート接続など医療安全の面など各施設の倫理員会を通じた対応を行っておくほうが得策と思われる.
施行回数・終了のめやす
・施行回数・終了は重症度によるが,急性肝不全と同様,10回を目処に効果判定を行う.
保険適用* 無
文 献
1) 孫麗香,鶴岡歩,石村圭位,他:重症アルコール性肝炎に対してPDF(Plasma Filtration with Dialysis)で管理した1例.日集中治療医会誌2018;25(S):O33-3
2) 中永士師明:薬物中毒に対する血液浄化療法.臨床透析2010;26:1365-70
3) 岡本勝,柳谷淳志,田中究,他:アセトアミノフェンによる急性肝不全の1例.鳥取医学雑誌2007;35:115-20
4) 中田孝明,平澤博之:急性血液浄化法 あんな症例・こんな症例 中毒性表皮壊死症(TEN).医薬の門2004;44:349-55
5) 吉岡豊一,森毅,近藤浩之,他:劇症型肝不全に対するPlasma Dia-Filtration(PDF)の試み.ICUとCCU 2003;27:S179-1
6) Nakae H:Blood purification for intoxication. Contrib Nephrol 2010;166:93-9
7) Nakae H, Hattori T, Igarashi T, et al:Removal of toxic substances by a selective membrane plasma separator. Ther Apher Dial 2014;18:265-71
8) 中永士師明,細井信幸,冨田浩輝,他:選択的膜型血漿分離器エバキュアープラスEC-4A10を用いたSelective plasma exchange with dialysis(PED)における溶質除去特性の牛血系in vitro評価.日アフェレシス会誌2017;36:41-6
9) 中永士師明:重症ベラパミル中毒に対してMolecular Adsorbent Recirculating System(MARS®)療法を施行した1例.日職災医誌2004;52:321-6