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日本アフェレシス学会雑誌:10-1-3 PDF:急性肝不全(PDF)

10-1-3 PDF
急性肝不全(PDF)
アフェレシスの方法 PDF
アフェレシスの目的 腎毒性物質・アルブミン結合物質除去
推奨レベル 1C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 3 14 6
疾患概念
 急性肝不全は広範な肝細胞壊死による,肝性昏睡,出血傾向を主症状とする症候群である.血液浄化を中心とした集中治療で肝臓が再生しない場合は,肝移植が最後の救命手段となる.本邦の診断基準では肝予備能が正常の肝臓が障害され,初発から8週以内に,プロトロンビン時間40%以下かINR値1.5以上を「急性肝不全」とし,肝性脳症I度以下を「非昏睡型」II度以上を「昏睡型」とし,初発症状から脳症II度以出現まで10日以内を急性型,それ以降を「亜急性型」としており,急性型の救命率は43.7%で亜急性型は27.2%である.

最新の治療状況
 世界的に最も信頼性の高い治療は肝移植で本邦ではドナー不足が深刻のため,移植の大半を生体肝移植が占める.成人では内科集中治療が中心となる.内科集中治療の主体はPEとHDF,CHDF,on-line HDFなどの血液浄化療法に加えステロイドパルス療法とその漸減である.

アフェレシスの根拠
・plasma filtration with dialysis(PDF)により炎症性メディエーター(TNF-α,IL-6,IL-18),cystatin C,ビリルビンなどが低下する.これに基づいて実施された前向き研究ではMELDスコア20~29点での90日生存率は70%と報告された.移植までの橋渡しとしても有効である.
・通常のPEでは施行後にアディポネクチンが減少するが,PDFでは上昇することが明らかになっている.
・小児例でも有効性と安全性が報告されている.
・FFPを緩徐に持続的に補液ラインから投与する持続緩徐式:continuous PDFも実施されており,安全性と急性肝不全での救命率が90%と高率であった報告もある.

施行上のポイント
・一般的なCHDF回路や血液浄化装置のみを使用することが望ましい.それら以外に新たに輸液ポンプを設置して補充液ラインなどとすることはポンプ制動のずれにより水分出納を精密に管理することができず,バランスが崩れる恐れがあるので推奨しない.
・腎不全を合併するなどにより除水が必要な場合は通常のCHDFと同様に設定できる.
・Dポート接続など医療安全の面など各施設の倫理員会を通じた対応を行っておくほうが得策と思われる.

施行回数・終了のめやす
 PDFでは経験上,4~10回の実施で治療効果を得ている.また,continuous PDFは1~10回実施している.

保険適用*   無

文   献
 1) 中永士師明:選択的血漿交換では溶血が起こり難い.日アフェレシス会誌2016;35:1
 2) 竹田圭,藤堂敦,中野健一,他:急性肝不全に対するPlasma filtration with dialysis(PDF)の施行経験.大阪透析研究会会誌2017;35:37-42
 3) 三住拓誉:劇症肝炎に対する肝移植前のplasma filtration with dialysis(PDF)当院における位置づけと使用経験.日アフェレシス会誌2017;36:180-3
 4) Yamamoto H, Nakae H, Uji Y, et al:Plasma adiponectin levels in acute liver failure patients treated with plasma filtration with dialysis and plasma exchange. Ther Apher Dial 2015;19:349-54
 5) 平山千佳,神里興太,渕上竜也,他:人工肝補助療法(Artificial Liver Support:ALS)におけるPDF(Plasma Filtration with Dialysis)の治療効果とその有用性.日アフェレシス会誌2016;35:42-7
 6) Nakae H, Igarashi T, Tajimi K, et al:Selective plasma exchange with dialysis in patients with acute liver failure. Ther Apher Dial 2012;16:467-71
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 8) 田村勇輔,黒田恭介,落合諭輔,他:亜急性劇症肝炎におけるPDFの施行経験.北海道臨工技士会誌2010;20:139-41
 9) \_c08267本功弘,鳥谷部陽一郎,丹代朋久,他:持続血漿交換ろ過透析(PDF)の検討.健生病医報2010;33:15-6
10) Nakae H, Igarashi T, Tajimi K, et al:A case report of pediatric fulminant hepatitis treated with plasma diafiltration. Ther Apher Dial 2008;12:329-32
11) 吉岡豊一,江口豊,五月女隆男,他:Plasma Dia-filtration (PDF)-Selective plasma filtration with dialysisの多施設による有効性の検討.ICUとCCU 2008;32:5093-6
12) 吉岡豊一,森毅,近藤浩之,他:劇症型肝不全に対するPlasma Dia-Filtration(PDF)の試み.ICUとCCU 2003;27:S179-81
13) Mori T, Eguchi Y, Shimizu T, et al:A case of acute hepatic insufficiency treated with novel plasmapheresis plasma diafiltration for bridge use until liver transplantation. Ther Apher 2002;6:463-6
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15) Eguchi Y:Plasma dia-filtration for severe sepsis. Contrib Nephrol 2010;166:142-9
16) Nakae H, Igarashi T, Tajimi K, et al:A case report of hepatorenal syndrome treated with plasma diafiltration (selective plasma filtration with dialysis). Ther Apher Dial 2007;11:391-5
17) Nakae H, Eguchi Y, Saotome T, et al:Multicenter study of plasma diafiltration in patients with acute liver failure. Ther Apher Dial 2010;14:444-50
18) Hayashi H, Takamura H, Taniguchi T, et al:A case of living donor liver transplant recipient treated with novel blood purification “plasma diafiltration”. Int Surg 2013;98:428-31
19) Komura T, Taniguchi T, Sakai Y, et al:Efficacy of continuous plasma diafiltration therapy in critical patients with acute liver failure. J Gastroenterol Hepatol 2014;29:782-6
20) 中永士師明,古屋智規,佐藤佳澄,他:急性肝不全に対するcontinuous plasma exchange with dialysis療法.日急性血浄化会誌2018;9:39-43