9-5-88 皮膚疾患領域
類天疱瘡
アフェレシスの方法 |
PE,DFPP |
アフェレシスの目的 |
自己抗体除去 |
推奨レベル |
1C |
カテゴリー |
II |
文献的報告数 |
RCT |
CT |
CS |
CR |
0 |
3 |
5 |
222 |
疾患概念
全身の皮膚に多発する掻痒を伴う浮腫性紅斑と緊満性水疱を生じる自己免疫性水疱性疾患である.口腔粘膜病変を生じる場合もある.天疱瘡でみられるニコルスキー現象は類天疱瘡では一般に陰性である.病因はIgG自己抗体が表皮基底膜部抗原,すなわちヘミデスモゾーム構成タンパクであるBP180(17型コラーゲン)あるいはBP230に結合し,表皮下水疱が誘導されると考えられている.
最新の治療状況
自己抗体産生を抑制するための副腎皮質ステロイド薬内服療法が主体である.併用療法として,免疫抑制薬,アフェレシス療法,IVIGなどがある.また局所療法として感染予防・びらん面の保護・上皮化促進のため外用療法も併用する.テトラサイクリン(あるいはミノサイクリン)とニコチン酸アミドの併用内服やジアフェニルスルフォン内服が奏功することもある.
アフェレシスの根拠
病因物質である自己抗体,すなわち前述の抗BP180抗体あるいは抗BP230抗体を患者流血中から除去,減少させることにより症状の改善がみられる.
施行上のポイント
カテーテル留置はびらん面を避け,感染に注意して適切な血管を選択する.血漿処理量は患者循環血漿量の1~1.5倍とする.施行後は低アルブミン血症,低γグロブリン血症またはDFPPの場合は凝固第8因子の低下の可能性を念頭に置いて皮膚病変の観察(感染徴候や出血病変の有無など)を行い,適宜検査を行い,必要な場合は補充する.
施行回数・終了のめやす
週2~3回,連日あるいは隔日で施行する.抗体価の減少を認め,水疱の新生が停止し,びらんの上皮化を認めたら終了する.健康保険では週2回を限度として3月に限って算定する.
保険適用* 有
当該療法の対象となる天疱瘡,類天疱瘡については,診察及び検査の結果,診断の確定したもののうち他の治療法で難治性のものまたは合併症や副作用でステロイドの大量投与ができないものに限り,当該療法の実施回数は,一連につき週2回を限度として,3月間に限って算定する.
文 献
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2) Roujeau JC, Guillaume JC, Morel P, et al:Plasma exchange in bullous pemphigoid, Lancet 1984;2:486-8
3) 塩沢恵美子,吉池久美子,山田裕道,小川秀興:類天疱瘡の治療と予後に関する1考察―血漿交換治療法を中心に―.臨床皮膚科1990;44:1137-42
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5) 中村和子,松倉節子,河野真純,他:血漿交換療法が有効であった難治性水疱性類天疱瘡3例の検討.日アフェレシス会誌2015;34:219-25
6) 大月亜希子,黛暢恭,池田志斈,橋本隆:抗BP230抗体のみ高値陽性であった水疱性類天疱瘡の3例.日皮会誌2008;118:2219-25
7) 和田紀子,山田裕道,矢口均,他:尋常性天疱瘡,水疱性類天疱瘡に対する血漿交換療法の評価 順天堂大学皮膚科42症例のまとめ.日皮会誌1996;106:1903-8
8) 渡辺修一:天疱瘡,類天疱瘡の血漿交換療法 自験例の整理と類天疱瘡抗体の水疱形成機序に果す役割.日皮会誌1983;93:953-64
9) 矢口均,山田裕道,高森建二,小川秀興:水疱性類天疱瘡に対する血漿交換療法(Bag式遠心分離法,二重濾過膜血漿交換療法)について.日アフェレシス会誌2000;19:180-3
10) Hunziker T, Schwarzenbach HR, Krebs A, et al:Plasma exchange in pemphigus vulgaris. Schweiz Med Wochenschr 1981;111:1637-42