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日本アフェレシス学会雑誌:9-2-86 皮膚疾患領域:天疱瘡

9-2-86 皮膚疾患領域
天疱瘡
アフェレシスの方法 PE,DFPP
アフェレシスの目的 自己抗体除去
推奨レベル 1C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 5 6 193
疾患概念
 皮膚・粘膜に病変が認められる自己免疫性水疱性疾患である.口腔粘膜には疼痛を伴う難治性のびらん・潰瘍が生じ,皮膚には弛緩性水疱,びらんを生じる.水疱は破れやすく,辺縁に疱膜を付着したびらんとなる.びらんはしばしば有痛性で,隣接したびらんが融合し大きな局面を形成することがある.一見正常な部位に圧力をかけると表皮が剥離しびらんを呈する.これをニコルスキー現象とよぶ.病因はIgG自己抗体が表皮細胞間接着因子であるデスモグレインに結合し,その接着機能を障害するために水疱が誘導されると考えられている.

最新の治療状況
 自己抗体産生を抑制するための副腎皮質ステロイド薬内服療法が主体である.併用療法として,免疫抑制薬,アフェレシス療法,IVIGなどがある.また局所療法として感染予防・びらん面の保護・上皮化促進のため外用療法も併用する.

アフェレシスの根拠
 病因物質である自己抗体,すなわち前述の抗デスモグレイン3抗体ならびに抗デスモグレイン1抗体を患者流血中から除去,減少させることにより症状の改善がみられる.

施行上のポイント
 カテーテル留置はびらん面を避け,感染に注意して適切な血管を選択する.血漿処理量は患者循環血漿量の1~1.5倍とする.施行後は低アルブミン血症,低γグロブリン血症またはDFPPの場合は凝固第8因子の低下の可能性を念頭に置いて皮膚病変の観察(感染徴候や出血病変の有無など)を行い,適宜検査を行い,必要な場合は補充する.

施行回数・終了のめやす
 週2~3回,連日あるいは隔日で施行する.抗体価の減少を認め,水疱の新生が停止し,びらんの上皮化を認めたら終了する.健康保険では週2回を限度として3月に限って算定する,ただし3月後でも重症度が中等度以上ではさらに3月延長できるとされている.

保険適用*   有
 当該療法の対象となる天疱瘡,類天疱瘡については,診察及び検査の結果,診断の確定したもののうち他の治療法で難治性のもの,または合併症や副作用でステロイドの大量投与ができないものに限り,当該療法の実施回数は,一連につき週2回を限度として,3月間に限って算定する.ただし,3月間治療を行った後であっても重症度が中等度以上(厚生労働省特定疾患調査研究班の天疱瘡スコア)の天疱瘡の患者については,さらに3月間に限って算定する.

文   献
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