8-11-79 腎疾患領域
難治性ネフローゼ症候群
アフェレシスの方法
PE,DFPP,LDL-A
アフェレシスの目的
ネフローゼ症候群の寛解導入・寛解維持
推奨レベル
PE・DFPP:なし LDL-A:2C
カテゴリー
PE・DFPP:III LDL-A:III
文献的報告数
RCT
CT
CS
CR
(PE・DFPP)
0
0
1
5
(LDL-A)
0
1
疾患概念
ネフローゼ症候群とは,腎糸球体障害によるタンパク透過性亢進に基づく多量の尿タンパクとそれに伴う低アルブミン血症を特徴とする症候群である.副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬を含む種々の治療を一定期間(6月または4月以上)行っても,完全寛解(尿タンパク<0.3g/日)または不完全寛解I型(0.3g/日≦尿タンパク<1.0g/日)に至らないものを難治性とする.
最新の治療状況
初期治療として副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が使用されている.これらの標準治療にて完全寛解または不完全寛解I型へ至らない症例に対して,タンパク尿減少効果を期待してPEまたはDFPP・LDL-Aが行われている.近年では,アフェレシス療法以外に,リツキシマブ(保険適用)やミコフェノール酸モフェチル(保険適用外)も考慮される.
アフェレシスの根拠
PEは,ネフローゼ症候群を惹起する液性因子(permeability factor)を除去することを目的としている.LDL-Aは,脂質異常症の改善以外にも,液性因子の吸着薬,サイトカイン・バランスの改善,細胞内の薬物輸送機構の改善が報告されている.副腎皮質ステロイド薬及び免疫抑制薬による既存の治療に反応しなかった症例でアフェレシスにより完全寛解または不完全寛解I型となり腎予後が改善した報告がされている.
施行上のポイント
血漿交換療法では免疫グロブリンや凝固因子も非選択的に除去されるため,置換液(アルブミンあるいは新鮮凍結血漿)を選択する必要がある.LDL-Aでは,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬の併用により,過剰にブラッジキニンが産生されてショックとなることがあるため,併用禁忌である.
施行回数・終了のめやす
PEでは,諸外国のガイドラインがすでに示しているように,必要性及び有効性については,個々の症例に応じた判断が求められる.ネフローゼ症候群の原因が巣状分節性糸球体硬化症の場合,LDL-Aは,従来の薬物療法では効果が得られず,ネフローゼ状態を持続し,血清コレステロール値が250mg/dL以下に下がらない場合に,一連につき3月間に限って12回を限度として保険適用となっている.これまで報告されているcase seriesでは,最初の3週間に週2回,その後は6週間で週1回行うプロトコールが散見される.
保険適用* 有
当該療法の対象となる巣状糸球体硬化症は,従来の薬物療法では効果が得られず,ネフローゼ状態を持続し,血清コレステロール値が250mg/dL以下に下がらない場合であり,当該療法の実施回数は,一連につき3月間に限って12回を限度として算定する.
文 献
1) 厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班報告:難治性ネフローゼ症候群(成人例)の診療指針―平成13年度までの調査研究より―.日腎会誌2002;44(8):751-61 2) 厚生労働省難治性疾患克服研究事業進行性腎障害に関する調査研究班:難治性ネフローゼ症候群分科会ネフローゼ症候群診療指針.日腎会誌2001;53(2):78-122 3) エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2017,東京医学社,東京,2017 4) Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)Glomerulonephritis Work Group. KDIGO Clinical Practice Guideline for Glomerulonephritis. Kidney Int Suppl 2012;2:139-274