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日本アフェレシス学会雑誌:8-9-77 腎疾患領域:糖尿病性腎症

8-9-77 腎疾患領域
糖尿病性腎症
アフェレシスの方法 LDL-A
アフェレシスの目的 尿蛋白減少,腎機能保持
推奨レベル 1C
カテゴリー III
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 2 1 1
疾患概念
 糖尿病を基礎疾患とした代謝障害や血行障害により腎糸球体の細小血管障害を主体とした腎障害を呈する疾患である.典型例では多量尿タンパクを伴い進行性に腎機能障害を来し末期腎不全に至る.我が国では現在,透析導入原疾患第1位である.

最新の治療状況
 血糖管理,塩分やカロリー管理,レニンアンギオテンシン系阻害薬,SGLT2阻害薬などを用いた保存的治療が行われている.

アフェレシスの根拠
 多量尿タンパクを呈し薬物治療抵抗性の糖尿病性腎症に対するLDL-Aの症例報告が1998年になされて以降,4編の論文報告がある.これらの報告は観察研究であるが,糖尿病性腎症患者における尿タンパク減少,腎機能保持(悪化速度の軽減あるいは改善),腎イベント(血清クレアチニン倍化,透析導入,腎移植)回避率においてLDL-Aの有用性を示唆するものである.さらに,40名の多量尿タンパクを呈する糖尿病性腎症患者に対する多施設前向き介入試験(LICENSE研究)において,総死亡ならびに腎イベントと死亡を含む複合エンドポイントにおけるLDL-Aの有用性が示された.

施行上のポイント
 血漿分離後のLDL吸着カラムにはデキストラン硫酸をligandとして固着したリポソーバ®LA15を用いてLDL-Aを行う.アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬はブラジキニンの代謝分解を抑制し,本アフェレシス治療中に血圧低下・ショックを呈する可能性があるため禁忌である.

施行回数・終了のめやす
 現状では保険適用はない.週1~2回で1クール合計10~12回,1回あたりの血漿処理量50~60mL/kg体重.

保険適用*   無

文   献
 1) Kobayashi S:LDL-apheresis for diabetic nephropathy:a possible new tool. Nephron 1998;79:505-6
 2) Nakao T, Yoshino M, Matsumoto H, et al:Low-density lipoprotein apheresis retards the progression of hyperlipidemic overt diabetic nephropathy. Kidney Int Suppl 1999;71:S206-9
 3) Nakamura T, Kawagoe Y, Ogawa H, et al:Effect of low-density lipoprotein apheresis on urinary protein and podocyte excretion in patients with nephrotic syndrome due to diabetic nephropathy. Am J Kidney Disease 2005;45:48-53
 4) Sato E, Amaha M, Nomura M, et al:LDL-apheresis contributes to survival extension and renal function maintenance of severe diabetic nephropathy patients:a retrospective analysis. Diabetes Res Clin Pract 2014;106:241-6
 5) Wada T, Muso E, Maruyama S, et al:Effects of LDL apheresis on proteinuria in patients with diabetes mellitus, severe proteinuria, and dyslipidemia. Clin Exp Nephrol 2020