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日本アフェレシス学会雑誌:7-39-73 神経疾患領域:複合性局所疼痛症候群

7-39-73 神経疾患領域
複合性局所疼痛症候群
アフェレシスの方法 PE
アフェレシスの目的 CRPSの疼痛コントロール
推奨レベル 2C
カテゴリー III
文献的報告数 RCT CT CS CR
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疾患概念
 複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)は,軟部組織・骨損傷後(I型),神経損傷後(II型)に,組織損傷から予想されるより重度で長時間持続する慢性の神経障害性疼痛を主訴とし,自律神経症状(発汗,血管運動異常など),運動症状(筋力低下,ジストニアなど),萎縮性症候(皮膚・骨萎縮,脱毛,関節拘縮)などがみられる疾患である.CRPSの発症メカニズムについては,神経ペプチド(サブスタンP,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide:CGRP))の関与する神経炎症,末梢及び中枢神経における交感神経障害,皮質再編成のプロセスなどが挙げられ,最近は,自己抗体の関与する免疫学的機序などが推測をされている.

最新の治療状況
 予防的にはビタミンCの経口投与が有用である.治療としては,NSAIDs,ビスフォスフォネート製剤,抗痙攣薬,抗うつ薬,オピオイド,ケタミン静脈投与,カルシトニン,フリーラジカルスカベンジャー,脊髄電気刺激,髄腔内バクロフェン投与などが行われる.免疫治療として,副腎皮質ステロイド,IVIG,リツキシマブが使用されている.アフェレシス療法は,PEと免疫抑制薬や補助療法の併用,あるいは定期的なPEを継続すことで症状の改善を維持できたとする報告がある.

アフェレシスの根拠
 アフェレシス療法の有効報告が散見され,いくつかの後方視的研究を認めるが,RCTは存在しない.PEを施行したCRPS患者の90%で疼痛ならびに他の症状についても改善が得られたと報告されている.PEによりβ2アドレナリン,α1アドレナリン,ムスカリンM2受容体に対する自己抗体を除去することで,症状の緩和につながる可能性がある.

施行上のポイント
 CRPSに対するアフェレシス療法は,初回治療のみでは症状の再燃を認めるために,IVIGを含む他の免疫療法の併用,あるいは維持療法としての定期的なアフェレシス療法が必要となる.

施行回数・終了のめやす
 PEの1回の血漿処理量は,患者の循環血漿量の1.5倍とし,置換液は5%アルブミン液を使用する.7回のPEを1クールとして,2~3週間かけて1クールを行う.1クール使用後は,他の免疫療法を併用するか,維持療法としてのPEを週2回,4週間継続することで平均5.4か月間の疼痛緩和を維持できたとする報告がある.

保険適用*   無

文   献
 1) Aradillas E, Schwartzman RJ, Grothusen JR, et al:Plasma exchange therapy in patients with complex regional pain syndrome. Pain Physician 2015;18:383-94
 2) Blaes F, Dharmalingam B, Tschernatsch M, et al:Improvement of complex regional pain syndrome after plasmapheresis. Eur J Pain 2015;19:503-7
 3) Bruehl S:Complex regional pain syndrome. BMJ 2015;351:h2730
 4) Dawes JM, Vincent A:Autoantibodies and pain. Curr Opin Support Palliat Care 2016;10:137-42
 5) Dubuis E, Thompson V, Leite MI, et al:Longstanding complex regional pain syndrome is associated with activating autoantibodies against alpha-1a adrenoceptors. Pain 2014;155:2408-17
 6) 境徹也:CRPS総論.ペインクリニック2017;38(4):439-43
 7) 木村浩彰:複合性局所疼痛症候群の診断と治療.Jpn J Rehabil Med 2016;53(8):610-4
 8) 住谷昌彦,大住倫弘:CRPSのメカニズムと今後の展望.慢性疼痛2017;36(1):15-9
 9) Hendrickson JE, Hendrickson ET, Gehrie EA, et al:Complex regional pain syndrome and dysautonomia in a 14-year-old girl responsive to therapeutic plasma exchange. J Clin Apher 2016;31(4):368-74