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日本アフェレシス学会雑誌:7-38-72 神経疾患領域:クリオグロブリン血症

7-38-72 神経疾患領域
クリオグロブリン血症
アフェレシスの方法 PE
アフェレシスの目的 クリオグロブリンを除去
推奨レベル 2A
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
1 0 24 NA
疾患概念
 クリオグロブリン(cryoglobulin)血症とは,血中にクリオグロブリンが存在する状態をいう.クリオグロブリンは,37℃より低い温度で沈殿し,加熱して37℃以上になると溶解するという特徴を有する免疫グロブリンと定義される.クリオグロブリン血症は,免疫グロブリンの組成から3つに分類される.I型は単クローン性の免疫グロブリンによるもので,主に多発性骨髄腫やワンデンストレームマクログロブリン血症でみられる.II型及びIII型はIgG,IgMを含むため混合型とも呼ばれる.II型は多クローン性IgGと単クローン性IgMによるもので,多くはC型肝炎(HCV)患者でみられる.III型は多クローン性IgGと多クローン性IgMによるもので,炎症性疾患,免疫疾患,感染症(HCVを含む)などでみられる.クリオグロブリン血症全体の80~90%が混合型であり,その多くがHCV感染を合併している.クリオグロブリン血症の基本病態は,免疫グロブリンにより形成された免疫複合体が全身の細血管壁に沈着し,補体の活性化,免疫反応を惹起することにより引き起こされる全身性血管炎であり,主として皮膚(紫斑病,壊死性潰瘍),関節,末梢神経,腎臓などが侵される.診断は病歴,身体所見,血清補体値の低下,クリオグロブリンの検出などによって行う.

最新の治療状況
 治療は,重症度や基礎疾患の治療に基づいて行われる.特に混合型の場合は感染症のスクリーニングが重要である.無症候の場合は特に治療を要さず,軽症例では防寒と保温が症状緩和に有効であり,鎮痛薬の使用で対応が可能である.重症例では免疫抑制治療(ステロイド,シクロフォスファミド,リツキシマブ)を使用する.リツキシマブは抗CD20モノクローナル抗体製剤であり,B細胞のモノクローナルな増殖とクリオグロブリンの産生を抑制する効果を有する.リツキシマブは多施設RCT,大規模調査において従来の治療法(ステロイドパルス療法,アザチオプリン,シクロフォスファミド,PE)と比較して良好な治療成績が示されている.HCV関連のクリオグロブリン血症では,HCVに対する抗ウイルス療法が行われる.従来のインターフェロンを用いた治療ではウイルス学的持続陰性化率は60%程度と低かったが,近年登場した直接作用型ウイルス治療薬(direct acting antivirals:DAAs)では,持続陰性化率が95%以上と報告されるなど良好な治療成績が得られるようになり,クリオグロブリン血管炎に対する治療法としても期待されている.PEは病態の急激な増悪に対して,速やかにクリオグロブリンの除去を図ることで症状の改善が得られる.しかし,効果は一時的であるため免疫治療,原因疾患に対する治療に繋げる補助療法として位置づけられている.

アフェレシスの根拠
 PEは,効率的にクリオグロブリンを除去し,CRsや大規模調査において治療患者の70~80%で改善がみられている.PEは主に腎障害,神経障害,関節炎,潰瘍性紫斑を伴う活動期の中等度から重度のクリオグロブリン血症の症例で行われてきた.PEは,単独または免疫抑制治療との併用で,短期的または長期的なマネージメントを目的として施行される.DFPPまたはカスケード濾過法は,いずれも最初のフィルターで全血から血漿を分離し,さらに2番目のフィルターで高分子量タンパク質(IgMなど)を除去するため,クリオグロブリン血症の治療として使用されてきた.その他のアフェレシスモダリティとしては,クリオフィルトレーション,クリオグロブリンアフェレシスがある.これらは,体外循環路で血漿を連続的または2段階手順で冷却しクリオグロブリンを除去する.残された血漿は体温まで温められてから患者に戻される.クリオフィルトレーションは,DFPPよりもクリオグロブリンの除去効率は低いとされている.また,PAがクリオグロブリンの低下に有効であると示したRCTは1つのみである.

施行上のポイント
 血管内でのクリオグロブリン沈殿を防ぐことを目的にPEが行われる.室内,点滴ライン,置換液を温めることが大切である.体外循環回路内でクリオロブリンが沈殿した報告もある.一方,DFPPの変法であるクリオフィルトレーションでは,効率よくクリオグロブリンを除去するため,あえて血漿を冷却しクリオグロブリンを形成させる.

施行回数・終了のめやす
 急性期治療としては,2~3週間程度の期間,計3~8回程度の治療を行い,臨床的に治療効果判定を行うことが考慮される.

保険適用*   無

文   献
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