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日本アフェレシス学会雑誌:7-28-62 神経疾患領域:特発性肥厚性硬膜炎

7-28-62 神経疾患領域
特発性肥厚性硬膜炎
アフェレシスの方法 LCAP
アフェレシスの目的 免疫調節
推奨レベル 2C
カテゴリー III
文献的報告数 RCT CT CS CR
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疾患概念
 肥厚性硬膜炎(hypertrophic pachymeningitis:HP)は,頭蓋や脊椎における硬膜を病変の主座とする炎症による硬膜が著明に肥厚した病態を指し,頭痛,難聴,顔面神経麻痺などの多発脳神経障害,小脳性運動失調,ミエロパチーなどの神経症状が生じる疾患である.HPは続発性と特発性に分類される.続発性HPの場合では抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎,ウェゲナー肉芽腫,サルコイドーシスなどの炎症性疾患,細菌,真菌,結核感染,多臓器線維症などが原因として考えられている.近年,特発性HPと診断されていた生検硬膜組織からIgG4陽性の形質細胞を認める例があり,特発性HPにおいてはIgG4関連疾患との関係が示唆されている.我が国におけるHPの有病率は10万人当たり0.949であり,平均年齢58.3歳,男女比は1:0.91であった.

最新の治療状況
 特発性HPの場合,IgG4関連疾患に準じ副腎皮質ステロイド療法が行われることが多い.ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン1,000mg/日,3日間)後に経口維持療法を漸減していく.副腎皮質ステロイド薬の効果が不十分な場合,メトトレキサート(Methotrexate:MTX),アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェチル,シクロフォスファミドなどの免疫抑制薬の併用や,CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブの有効性の報告などが散見される.また,外科的治療としてシャント術や,肥厚硬膜による圧迫の除圧目的に肥厚硬膜の切除が施行されることもある.

アフェレシスの根拠
 特発性HP,特にIgG4関連肥厚性硬膜炎の機序としては,T・Bリンパ球による炎症性浸潤が線維芽細胞を活性化させることによりコラーゲンの沈着を誘導,組織や硬膜の肥厚を促進させることが示されている.前述の副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬による治療と同様に,アフェレシスにより患者免疫状態が是正されることが期待されるが機序は不明である.

施行上のポイント
 過去に特発性肥厚性硬膜炎に対するアフェレシスの有効性の報告は1報である.Yamamotoらは頭痛,顔面痛,片側性舌萎縮,嚥下障害を来し,特発性HPと診断した48歳男性にLCAPを単回施行し,長期間(14月間)にわたり効果が持続したと報告している.なお,本症例はステロイドパルス療法が著効したが,経口内服中にステロイド糖尿病を合併したため,維持療法の代替としてアフェレシスが選択さている.Cellsorba(CS 100;Asahi Medical Co., Tokyo, Japan)を用い,毎分50mLの全血を採取して60分間,合計3,000mLの全血処理を単回施行した.アフェレシス終了よりCD4/8比の低下が持続し,これは14月間持続,その間に臨床的な再発は見られなかったと報告している.PEに関する報告はない.

施行回数・終了のめやす
 LCAPの適応に関して,今後検討を要する.

保険適用*   無

文   献
 1) 河内泉,西澤正豊:膠原病・類縁疾患に伴う神経・筋障害の診断と治療 肥厚性硬膜炎.日内会誌2010;99:1821-9
 2) https://www.nanbyou.or.jp/entry/3202
 3) De Virgilio A, de Vincentiis M, Inghilleri M, et al:Idiopathic hypertrophic pachymeningitis:an autoimmune IgG4-related disease. Immunol Res 2017;65(1):386-94;doi:10.1007/s12026-016-8863-1, Review. PubMed PMID:27592235
 4) Yonekawa T, Murai H, Utsuki S, et al:A nationwide survey of hypertrophic pachymeningitis in Japan. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014;85(7):732-9;doi:10.1136/jnnp-2013-306410, Epub 2013 Nov 22, PubMed PMID:24273222
 5) Lu LX, Della-Torre E, Stone JH, Clark SW:IgG4-related hypertrophic pachymeningitis:clinical features, diagnostic criteria, and treatment. JAMA Neurol 2014;71(6):785-93;doi:10.1001/jamaneurol.2014.243, Review. PubMed PMID:24733677
 6) Yamamoto T, Goto K, Suzuki A, et al:Long-term improvement of idiopathic hypertrophic cranial pachymeningitis by lymphocytapheresis. Ther Apher 2000;4(4):313-6