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日本アフェレシス学会雑誌:7-21-55①改 神経疾患領域:皮膚筋炎,多発筋炎

7-21-55①改 神経疾患領域
皮膚筋炎,多発筋炎
アフェレシスの方法 PE,IAPP,CAP
アフェレシスの目的 寛解導入・寛解維持
推奨レベル 2B/2C
カテゴリー IV
文献的報告数 RCT CT CS CR
1 2 4 18
疾患概念
 急性から亜急性に進行する対称性の四肢近位筋痛,筋力低下,筋酵素上昇を伴う炎症性筋疾患である.筋症状のみのものが多発筋炎(polymyositis:PM),皮膚症状を合併したものが皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)である.皮膚症状は,上眼瞼の浮腫性紅斑(ヘリオトロープ疹)や,手の小関節背面の角化の強い丘疹(Gottron徴候)などが特異的である.間質性肺炎,心筋障害,悪性腫瘍の合併がみられることがあり,間質性肺炎は,抗ARS抗体陽性例に多い.有病率は10万人あたり2~5人とされ,女性に多い.確定診断には筋生検で炎症性細胞浸潤と筋線維の壊死を証明する.

最新の治療状況
 副腎皮質ステロイド薬が標準的に用いられる.副腎皮質ステロイド抵抗性の難治例に対しては種々の免疫抑制薬(シクロフォスファミド,アザチオプリン,メトトレキサート(Methotrexate:MTX),シクロスポリンなど)に加え,免疫グロブリン大量療法が用いられる.アフェレシスは,これらの治療に併用して施行されることがあるが頻度は減っている.

アフェレシスの根拠
 病態には免疫応答が関与しており,アフェレシスによる治療効果が期待できる.PMとDMの共通の病理所見として,B細胞とCD4+T細胞が血管周囲や筋周膜に多く分布し,CD8+T細胞が筋内膜及び筋線維内に認める.PMでは,筋線維周囲にCD8+T細胞浸潤とMHC class Iの発現亢進がみられ,細胞傷害性T細胞が関与している.DMでは,筋線維束周辺の血管周囲のCD4+T細胞浸潤を認め免疫複合体などの液性因子による血管炎が関与している.

施行上のポイント
 治療抵抗症例に対する多くの報告がある.副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬に対して治療抵抗性の35例に対して,PE,シクロフォスファミドを用いた海外のオープン試験では,32例で筋力の改善を認めたと報告されている.しかし,39例をPE,leukapheresis群,偽治療群の3群に分けて,1月間に12回の治療を行った二重盲検試験では,筋力の回復に有意差は認めなかった.以上より,アフェレシスは少数例での検討や症例報告レベルでは有用性が示されているが,多数例での他の治療法との比較試験では明らかな治療効果は証明されていないため,種々の治療に対して抵抗性の難治例に限って考慮すべきである.

施行回数・終了のめやす
 保険適用外.明確な有効性を示した報告はなく,適用は限られる.

保険適用*   無

文   献
 1) Choy EHS, Isenberg DA:Treatment of dermatomyositis and polymyositis. Rheumatology 2002;41:7-13
 2) Arahata K, Engel AG:Monoclonal antibody analysis of mononuclear cells in myopathies. Quantitation of subsets according to diagnosis and sites of accumulation and demonstration and counts of muscle fibers invated by T cells. Ann Neurol 1986;16:193-208
 3) 長谷麻子,荒畑喜一:多発筋炎・皮膚筋炎の免疫病理と治療.日内会誌1998;87:664-9
 4) Kissel JT, Mendell JR, Rammohan KW:Microvascular deposition of complement membrane attack complex in dermatomyositis. N Engl J Med 1986;314:329-34
 5) Dau PC:Plasmapheresis in idiopathic inflammatory myopathy. Experience with 35 patients. Arch Neurol 1981;38:544-52
 6) Bennington JL, Dau PC:Patients with polymyositis and dermatomyositis who undergo plasmapheresis therapy. Pathologic findings. Arch Neurol 1981;38:553-60
 7) Brewer EJ, Giannini EH, Rossen RD, et al:Plasma exchange therapy of a childhood onset dermatomyositis patient. Arthritis Rheum 1980;23:509-13
 8) 吉岡美恵子,津田英夫,吉田弥太郎:Lymphoplasmapheresisによる難治性小児多発性筋炎の治療.臨床神経1984;24:214-7
 9) Maruyama T, Koh CS, Inoue A, et al:Successful treatment of “steroid-immunosuppressant resistant” polymyositis with immunoadsorption. Rinsho Shinkeigaku 1991;31:1208-13
10) Miller FW, Leitman SF, Cronin ME, et al:Controlled trial of plasma exchange and leukapheresis in polymyositis and dermatomyositis. N Engl J Med 1992;326:1380-4