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日本アフェレシス学会雑誌:7-19-53改 神経疾患領域:SLEに伴う神経症状

7-19-53改 神経疾患領域
SLEに伴う神経症状
アフェレシスの方法 IAPP,PE,DFPP
アフェレシスの目的 自己抗体,免疫複合体の除去
推奨レベル 2C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 0 5 11
疾患概念
 種々の自己抗体や免疫複合体により皮膚・粘膜,筋・関節,腎,神経,肺,心血管,消化器,血液など全身に炎症性病変を呈する疾患である全身性エリトマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の中で,特に意識障害(急性錯乱状態),認知機能障害,気分障害,不安障害,精神病性障害などの瀰漫性精神症状,頭痛,痙攣,不随意運動(運動障害),脊髄症,無菌性髄膜炎,てんかん,脳血管障害,脱髄疾患などを呈する中枢神経症状,あるいは単神経炎,多発単神経炎,多発性神経炎,脳神経炎,神経叢障害,重症筋無力症などの末梢神経症状を呈するものがある.従来の中枢神経ループスという呼称から神経精神ループス(neuropsychiatric SLE:NPSLE)と総称されるようになった.ループス腎炎とならぶSLE難治性病態の1つであり,予後不良・他臓器病変の合併・QOL低下と関連している.

最新の治療状況
 副腎皮質ステロイド薬(経口,パルス療法),免疫抑制薬(アザチオプリン,ミコフェノール酸,シクロスポリンA,メトトレキサート(Methotrexate:MTX),シクロフォスファミドなど),リツキシマブ,免疫グロブリン,アフェレシス療法,さらに自家末梢血幹細胞移植もありうる.抗リン脂質抗体症候群合併の場合には抗血小板療法や抗凝固療法が使われる.ステロイド剤はグレード1A/2A/B,シクロフォスファミドパルス以外はグレード3D.

アフェレシスの根拠
 病態として微小血管障害,神経細胞に対する自己抗体,髄腔内での炎症性メディエーターの産生などが想定されており,自己抗体(抗リボソームP抗体,抗Ro抗体,抗リン脂質抗体,抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)-NR2抗体など)の除去,炎症性サイトカイン(IL-6,TNFαなど),補体・免疫複合体などを低下させることにより効果を示すと考えられている.RCTやCTはループス腎炎のみで施行されているが,重症例・難治例に対するステロイド剤やシクロフォスファミドパルスとの併用療法として症例報告が散見される.既存治療で奏功しない重篤な26症例に対し単独もしくはシクロフォスファミドとの併用療法を比較した総説によると74%が改善,13%が安定し,その多くが数日で反応し,数例は併用療法に依存したが,数例はアフェレシス療法単独の定期施行で長期維持が可能であり,また難治症例10例の13個の再燃に対しステロイド・シクロフォスファミドとの血液浄化療法の併用により全例が平均3週間(1.5~8週間)で軽快し,54%が平均7週間(2~22週間)で完全寛解し残りもすべて部分寛解したという報告もされている.なかにはシクロフォスファミドすら無効な精神症状に対するDFPPの著効例や副作用で使用できない症例へのIAPPの有効例も報告されている.

施行上のポイント
 穿刺部位の感染や凝固・出血傾向の有無,ルートの固定(意識障害,不随意運動のある場合)に注意する.

施行回数・終了のめやす
 NPSLEはCNSループスのことであり,保険適用である.文献的には病勢に応じて週1~3回の頻度で,併用療法の場合は4~20回程度施行し,リバウンド防止でシクロフォスファミドを追加する.維持療法の場合は2か月に1回程度を目安に適宜調節する.

保険適用*   有
 当該療法の対象となる全身性エリテマトーデスについては,次のいずれにも該当する者に限り,当該療法の実施回数は,月4回を限度として算定する.なお,測定した血清補体価,補体蛋白の値または抗DNA抗体の値を診療録に記載する.
 ア 都道府県知事によって特定疾患医療受給者と認められた者
 イ 血清補体価(CH50)の値が20単位以下,補体タンパク(C3)の値が40mg/dL以下及び抗DNA抗体の値が著しく高く,ステロイド療法が無効または臨床的に不適当な者
 ウ 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)または中枢神経性ループス(CNSループス)と診断された者

文   献
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