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日本アフェレシス学会雑誌:7-11-45改 神経疾患領域:視神経脊髄炎関連疾患

7-11-45改 神経疾患領域
視神経脊髄炎関連疾患
アフェレシスの方法 PE,IAPP
アフェレシスの目的 自己抗体・補体除去
推奨レベル 1B
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 3 20 NA
疾患概念
 視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)は,視神経炎と脊髄炎を中核とし,血清中の抗アクアポリン4(aquaporin-4:AQP4)抗体が病態に関与する自己免疫性炎症性疾患である.近年,抗AQP4抗体陽性という特異な自己抗体を生ずる共通の病態を背景とする一群を広く視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitis optica spectrum disorders:NMOSD)と提唱された.さらに,抗AQP4抗体陽性NMOSD,抗AQP4抗体陰性あるいは未測定NMOSDに分類した国際診断基準が提唱されている.NMOSDの視神経炎では失明することもまれではなく,視交叉病変により両眼性視覚障害を起こすこともある.脊髄炎はMRI矢状断ではしばしば3椎体以上に及ぶ長い病変を呈し,軸位断では脊髄の中央部に位置することが多い.血清抗AQP4抗体はNMOに特異的な自己抗体であり,約70%の症例で陽性となる.NMO症例の80~90%は再発性で,一部の症例では単相性の経過を示す.男女比は1:9で女性に多く,平均発症年齢は39歳である.近年,抗AQP4陰性NMOSD症例においてmyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)に対する自己抗体(MOG-IgG)が同定され,抗MOG抗体陽性神経関連疾患が提唱されている.

最新の治療状況
 NMOの治療は,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)と同様に急性増悪期と寛解期の治療とに分けられる.NMO急性増悪期では,早期からのステロイドパルス療法が第一選択される.副腎皮質ステロイド治療抵抗性の症例ではアフェレシス療法が選択される.近年,ステロイドパルス療法とアフェレシス療法を併用した早期併用療法(early combined therapy:ECT)の有効性も報告され,また,NMOの寛解期では,再発抑制を目的に経口副腎皮質ステロイド薬,免疫抑制薬(アザチオプリン,タクロリムス,シクロスポリンなど)が用いられている.その他,ミコフェノール酸モフェチル,ミトキサントロン,リツキシマブ,IVIG,エクリツマブなどがある.

アフェレシスの根拠
 Weinshenkerらはステロイドパルス療法が無効であった重篤なMS急性増悪期12例,NMO 2例,再発性脊髄炎1例を含む中枢性炎症性脱髄疾患22例に対して,PE 11例,sham PE 11例のRCTを施行.PEは隔日で2週間施行,無効例ではcross-over試験を施行した.その結果,8/19例(42.1%)に中等度以上の急速な改善を示し,sham PEに比較し有効性を認めたと報告している.Watanabeらは副腎皮質ステロイド治療が無効であったNMO 6例にPEを施行,3例に改善し有効性を認めている.Keeganらは炎症性脱髄性疾患59例の後ろ向き試験の検討から,NMOではPEによる改善率が高く,中等度以上の改善が6/10例(60%)にみられ,発症早期にPEを施行すべきであると報告している.野村らはNMOに対するIAPPの有効性の検討,副腎皮質ステロイド治療抵抗性21例に対してIAPPを施行し,15/21例(71%)で臨床症状の改善を認めたことを報告している.また,再発性NMOSDにおいて維持療法としてPEを定期的に繰り返し,再発を抑制した報告もある.

施行上のポイント
 NMO急性増悪期の治療として,ステロイドパルス療法が施行されにもかかわらず治療効果が十分に認められない,あるいは治療中にもかかわらず神経症候がさらに進行する症例がある.このような症例ではアフェエレシス療法が第二選択される.最近,急性増悪期に四肢麻痺,呼吸障害を呈する重篤な症例では,早期からアフェレシス療法を施行することが推奨される.王子らはNMO増悪期に副腎皮質ステロイド治療反応性を予測するQIgGを測定し,QIgG高値の症例ではECTを推奨している.さらに,重症の視力障害を呈したステロイド治療抵抗性の視神経炎に対してもPEが有効であるとの報告がある.

施行回数・終了のめやす
 NMOに対するアフェレシス療法は,MSと同様に,急性増悪期においてステロイドパルス治療の効果が十分に得られない症例に積極的に施行する治療である.施行回数は,一連の病態につき月7回までの施行が承認されている.

保険適用*   無

文   献
 1) Wingerchuk DM, Lennon VA, Luchinetti CF, et al:The spectrum of neuromyelitis optica. Lancet Neurol 2007;6:805-15
 2) Wingerchuk DM, Lennon VA, Pittock SJ, et al:Revised diagnostic criteria for neuromyelitis optica. Neurology 2006;66(10):1485-9
 3) Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL, et al:International Panel for NMO Diagnosis. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85(2):177-89
 4) Jarius S, Kleiter I, Ruprecht K, et al:MOG-IgG in NMO and related disorders:a multicenter study of 50 patients. Part 3:Brainstem involvement-frequency, presentation and outcome. J Neuroinflammation 2016;13(1):281
 5) 野村恭一:NMOの治療戦略 各論 視神経脊髄炎(NMO)免疫性神経疾患.日本臨床2013;71(5):829-38
 6) 野村恭一,王子聡,吉田典史,他:厚生労働省科学研究費補助金,難治性疾患克服事業:免疫性神経疾患に関する調査研究班,平成19年度報告書,2008, pp.82-4
 7) Weinshenker BG, O'Brien PC, Petterson TM, et al:A randomized trial of plasma exchange in acute central nervous system inflammatory demyelinating disease. Ann Nwurol 1999;46:878-86
 8) Watanabe S, Nakashima I, Misu T, et al:Therapeutic efficacy of plasma exchange in NMO-IgG-opsitive patients with neuromyelitis optica. Mult Scler 2007;13:128-32
 9) Keegan M, Pineda AA, McClelland RL, et al:Plasma exchange for severe attacks of CNS demyelination:predictors of response. Neurology 2002;58:143-6
10) Sherman E, Han MH:Acute and chronic management of neuromyelitis optica spectrum disorder. Curr Treat Options Neurol 2015;17(11):48
11) Miyamoto K, Kusunoki S:Intermittent plasmapheresis prevents recurrence in neuromyelitis optica. Ther Apher Dial 2009;13(6):505-8
12) Kleiter I, Gahlen A, Borisow N, et al:Apheresis therapies for NMOSD attacks:A retrospective study of 207 therapeutic interventions. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2018;5(6):e504
13) Oji S, Tanaka S, Kojima M, et al:Quotient of cerebrospinal fluid/serum immunoglobulin G as a predictive factor for non-responders to intravenous methylpredonisolone therapy in patients with relapsing neruomyelitis optica sepctrum disorder:Implication for early initiation of plasmapheresis. Clin Exper Neuroimmunol 2016;7:272-80
14) Deschamps R, Gueguen A, Parquet N, et al:Plasma exchange response in 34 patients with severe optic neuritis. J Neurol 2016;263(5):883-7