English

日本アフェレシス学会雑誌:7-8-42 神経疾患領域:急性散在性脳脊髄炎

7-8-42 神経疾患領域
急性散在性脳脊髄炎
アフェレシスの方法 PE,IAPP
アフェレシスの目的 自己抗体,炎症性サイトカイン除去
推奨レベル 2C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 0 7 29
疾患概念
 急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:ADEM)は,急性に発症する単相性の脱髄性疾患である.典型的にはウイルス・細菌感染や予防接種後に生ずる.発症年齢は全年齢で起こるが,特に小児期が多い.病因としてはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myeline oligodendrocyte glycoprotein:MOG),他の神経自己抗原に対する一過性の自己免疫異常により多巣性の炎症・脱髄病巣が起きると考えられている.MRIは診断に有用で,病変は斑状の高信号として深部白質,皮質下白質,基底核,灰白質-白質境界部,脳幹,小脳,脊髄にみられる.予後は良好であり,数週間から数か月での完全回復は55~95%とされ,死亡例は稀である.

最新の治療状況
 ADEMの治療は,診断後に可能な限り早急に治療を行う.治療は副腎皮質ステロイド治療が第一選択として広く行われている(メチルプレドニゾロン20~30mg/kg/day maximum 1g/day 3~5日間).成人ではメチルプレドニゾロン1,000mg/日,3~5日間,連日点滴静注が行われる.副腎皮質ステロイド治療は,抗炎症作用・免疫調節作用により効果を認める.副腎皮質ステロイド治療による反応が乏しい症例では,IVIGも行われるが,初回治療として行われることは稀である.

アフェレシスの根拠
 PEは,液性因子・自己抗体などを取り除くために施行される.PEは,副腎皮質ステロイド治療の反応性が乏しい症例において第二選択治療として用いられる.大規模後方視的研究では228例のADEMのうち17症例(7%)にPEを必要としたとする報告がある.

施行上のポイント
 ADEMにおけるPE法の標準的治療法はない.PEの施行は,発症15日以内が推奨され,神経症状の改善は2~3回施行した数日後で現れると報告されている.PEは,血漿処理量1.1~1.4循環血漿量程度であり,置換液はアルブミン液,FFPが用いられている.

施行回数・終了のめやす
 ADEMに対するアフェレシス療法は,主にPEが用いられる.中等症あるいは重症ADEMに対するPEの症例報告では40%に改善を認めている.多くの症例報告ではPEを5~7回治療したと報告している.

保険適用*   無

文   献
 1) Alper G:Acute disseminated encephalomyelitis. J Child Neurol 2012;27:1408-25
 2) Koelman DL, Mateen FJ:Acute disseminated encephalomyelitis:current controversies in diagnosis and outcome. J Neurol 2015;262:2013-24
 3) Bigi S, Banwell B, Yeh EA:Outcomes after early administration of plasma exchange in pediatric central nervous system inflammatory demyelination. J Child Neurol 2015;30:874-80
 4) Borras-Novell C, Rey EG, Baena LFP, et al:Theraputic plasma exchange in acute disseminated encephalomyelitis in children. J Clin Apher 2015;30:335-9
 5) Koerlman DLH, Chabin S, Mar SS, et al:Acute disseminated encephalomyelitis in 228 patients. Neurology 2016;86:2085-93
 6) Keegan M, Pineda AA, McClelajd RL, et al:Plasma exchanges for severe attacks of CNS demyekination:predictors of response. Neurology 2002;58:143-56
 7) Khurana DS, Melvin JJ, Kothare SV, et al:Acute disseminated encephalomyelitis in children:discordant neurologic and neuroimaging abnomalitis and response to plasmapheresis. Pediatrics 2005;116:431-6