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日本アフェレシス学会雑誌:6-2-28改 消化器疾患領域:潰瘍性大腸炎

6-2-28改 消化器疾患領域
潰瘍性大腸炎
アフェレシスの方法 GMA,LCAP
アフェレシスの目的 異常に活性化した顆粒球や単球などの白血球を吸着除去する
推奨レベル 1B
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
13 110 38 30
疾患概念
 潰瘍性大腸炎は,主として粘膜を侵し,糜爛や潰瘍を形成する原因不明の大腸のびまん性非特異性炎症である.その経過中に再燃と寛解を繰り返すことが多い.30歳以下の成人に多いが,小児や50歳以上の年齢層にもみられる.原因は不明で,免疫病理学的機序や心理学的要因の関与が考えられている.主症状は,血便や下痢を呈するが,病変範囲と重症度によって左右される.他の症状としては腹痛,発熱などが加わることも多い.さらに関節炎,虹彩炎,膵炎,皮膚症状(結節性紅斑,壊疽性膿皮症など)などの腸管外合併症を伴うことも少なくない.

最新の治療状況
 原則として軽症及び中等症例では5-aminosalicylic acid(5-ASA)製剤を,無効例や重症例で副腎皮質ステロイドにて寛解導入を行う.免疫調節薬はステロイド依存例で使用され,ステロイド抵抗や依存例ではタクロリムス,抗TNFα受容体拮抗薬(インフリキシマブ,アダリムマブ,ゴリムマブ)あるいは血球成分除去療法が行われる.寛解維持には5-ASA製剤が使用されるが,ステロイド依存例では免疫調節薬の使用も考慮する.また抗TNFα受容体拮抗薬で寛解導入された場合は同じ薬剤で維持を図る場合が多い.血球成分除去療法の維持療法の有用性については,現在医師主導の臨床試験が行われている.

アフェレシスの根拠
 日本では,中等症~重症の潰瘍性大腸炎に対して保険治療として用いられる.欧米で行われたshamカラムを用いたblinded RCTで,GMAの有効性は証明されなかった.一方,中等症~重症潰瘍性大腸炎に対する寛解導入効果についてメタアナリシスがあり,Zhuらはアフェレシス療法が安全性,ステロイド減量効果に優れていたと報告している.本邦からの報告ではYoshinoらはアフェレシス療法がコルチコステロイドと比較して,臨床的寛解に有効であること(オッズ比2.23;95%信頼区間1.38~3.60),またアフェレシス療法はコルチコステロイドより有害事象の割合も低く安全であること(オッズ比,0.24;95%信頼区間:0.15~0.37)を報告した.施行回数では,日本で行われたRCT(オープン試験)において,週2回法による早期寛解導入効果と寛解率の向上(54% vs 71%)が示された.保険適用外であるが,アフェレシス療法によるUCに対する寛解維持効果の報告は少なく,現在本邦における多施設共同研究にてアフェレシス療法を月に2回施行する群と従来治療継続群に割り付け1年間の累積非再燃率を比較する試験が行われている.

施行上のポイント
 通常週1回で行うが,症状の強い症例などは週2回で行った方が効果が高い.治療中に増悪する症例や無効と判断した症例は他の治療へ変更する.重症例に行う場合は比較的早い時期から併用すべきであり,有効性の判定も早期に行うべきである.なお本治療は専門施設で行うのが望ましいとされている.原則として,GMAは30mL/分の流速で,LCAPは30~50mL/分の流速で循環を行い,60分の治療時間で吸着除去を行う.

施行回数・終了のめやす
 一連につき10回を限度とするが,劇症患者については,11回を限度として施行する.各治療の間隔に関する制限はない.一方で重症例・劇症例においては,治療初期において治療効果が認められなかった場合は,本治療に執着せず,タクロリムス,インフリキシマブ,アダリムマブ,ゴリムマブへの変更,あるいは外科手術を考慮する.寛解導入された後は5-ASA製剤や免疫調節薬で寛解維持を図る.

保険適用*   有
 血球成分除去療法(吸着式及び遠心分離式を含む)は,潰瘍性大腸炎の場合,次のとおり実施した場合に算定できる.潰瘍性大腸炎の重症・劇症患者及び難治性患者(厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班の診断基準)に対しては,活動期の病態の改善及び緩解導入を目的として行った場合に限り算定できる.なお,当該療法の実施回数は,一連につき10回を限度として算定する.ただし,劇症患者については,11回を限度として算定できる.

文   献
 1) Sands BE, Sandborn WJ, Feagan B, et al:A randomized, double-blind, sham-controlled study of granulocyte/monocyte apheresisfor active ulcerative colitis. Gastroenterology 2008;135(2):400-9
 2) Zhu M, Xu X, Nie F, et al:The efficacy and safety of selective leukocytapheresis in the treatment of ulcerative colitis:a meta-analysis. Int J Colorectal Dis 2011;26(8):999-1007
 3) Yoshino T, Nakase H, Minami N, et al:Efficacy and safety of granulocyte and monocyte adsorption apheresis for ulcerative colitis:a meta-analysis. Dig Liver Dis 2014;46(3):219-26
 4) Sakuraba A, Motoya S, Watanabe K, et al:An open-label prospective randomized multicenter study shows very rapid remission of ulcerative colitis by intensive granulocyte and monocyte adsorptive apheresis as compared with routine weekly treatment. Am J Gastroenterol 2009;104(12):2990
 5) Fukunaga K, Yokoyama Y, Kamikozuru K, et al:Adsorptive granulocyte/monocyte apheresis for the maintenance of remission in patients with ulcerative colitis:a prospective randomized, double blind, sham-controlled clinical trial. Gut Liver 2012;6:427-33
 6) Sakuraba A, Sato T, Morohoshi Y, et al:Intermittent granulocyte and monocyte apheresis versus mercaptopurine for maintaining remission of ulcerative colitis:a pilot study. Ther Apher Dial 2012;16(3):213-8