English

日本アフェレシス学会雑誌:6-1-29改 消化器疾患領域:クローン病

6-1-29改 消化器疾患領域
クローン病
アフェレシスの方法 GMA
アフェレシスの目的 異常に活性化した顆粒球や単球を吸着除去する
推奨レベル 2B
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
4 9 20 12
疾患概念
 クローン病は若年に発症する炎症性疾患であり,遺伝的素因,環境因子,腸内細菌の刺激により腸管粘膜の免疫の過剰を来すことにより発症するとされているが,未だ原因は明らかでない.消化管の口腔から肛門までのいずれにも炎症を来しうるが,特に回盲部が好発部位である.潰瘍性大腸炎と異なり,全層性の炎症を来し,狭窄・瘻孔・腹腔内膿瘍などの消化器合併症を来すのが特徴である.主症状としては腹痛,下痢,体重減少,発熱,肛門病変などがよくみられる症状で,ときに虫垂炎に類似の症状,腸閉塞,腸穿孔,大出血で発症する.

最新の治療状況
 寛解導入療法として,栄養療法(経腸栄養療法)または薬物療法を行う.薬物療法は5-aminosalicylic acid(5-ASA)製薬,副腎皮質ステロイド薬や抗TNFα受容体拮抗薬が使用される.近年軽症から中等症の回盲部を中心とした炎症を有する症例には体内での代謝が早いステロイドであるブデソニドが使用可能となった.また抗TNFα受容体拮抗薬抵抗例を中心にIL-12/23受容体拮抗薬であるウステキヌマブの使用も可能となっている.血球成分除去療法は薬物治療に抵抗する大腸に炎症の主座のある症例に保険承認されている.

アフェレシスの根拠
 既存の薬物療法や栄養療法で改善しない大腸病変を有する活動期症例に対してGMAの有効性が証明され,2010年に保険適用となった.また施行方法についてはYoshimuraらが週2回法による早期寛解導入の有効性を報告した.一方でSandsらは,GMA群とShamカラム群間で有効性に差はないことを報告し,現時点ではクローン病に対して有効性を示した根拠のある研究はほとんどないのが現状である.寛解維持効果については,症例報告があるのみである.

施行上のポイント
 栄養療法及び既存の薬物療法が無効または適用できない,大腸の病変に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の活動期クローン病患者に対して寛解導入目的で行う.クローン病に対する本治療法の単独での有用性,瘻孔や狭窄病変を有する症例での有用性,再発時の再導入療法としての有用性は確立されていないので注意が必要である.また治療効果がみられない場合に急速に悪化する可能性もあることに注意して使用すべきである.無効例では,ステロイド,インフリキシマブ,アダリムマブ,ウステキヌマブへの治療変更,あるいは外科手術を考慮する.寛解導入された後は5-ASA製剤や免疫調節薬,栄養療法で寛解維持を図る.

施行回数・終了のめやす
 GMAは免疫吸着ビーズを充填したカラムにより主に顆粒球・単球を除去する.原則として,GMAは30mL/分の流速で循環を行い,60分の治療時間で吸着除去を行う.また実施回数は,一連につき10回を限度として施行するが,各治療の間隔に関する制限はない.

保険適用*   有
 血球成分除去療法(吸着式及び遠心分離式を含む)は,潰瘍性大腸炎,関節リウマチ(吸着式のみ),クローン病,膿疱性乾癬または関節症性乾癬患者に対して次のアからエまでのとおり実施した場合に算定できる.
 ア (潰瘍性大腸炎に関して,略)
 イ (関節リウマチに関して,略)
 ウ 栄養療法及び既存の薬物療法が無効又は適用できない,大腸の病変に起因する明らかな臨床症状が残る中等症から重症の活動期クローン病患者に対しては,緩解導入を目的として行った場合に限り算定できる.
 エ (膿疱性乾癬に関して,略)
 なお,当該療法の実施回数は,一連の治療につき10回を限度として算定する.

文   献
 1) Fukuda Y, Matsui T, Suzuki Y, et al:Adsorptive granulocyte and monocyte apheresis for refractory Crohn's disease:an open multicenter prospective study. J Gastroenterol 2004;39(12):1158-64
 2) Yoshimura N, Yokoyama Y, Matsuoka K, et al:An open-label prospective randomized multicenter study of intensive versus weekly granulocyte and monocyte apheresis in active crohn's disease. BMC Gastroenterol 2015;15:163
 3) Sands BE, Katz S, Wolfet DC, et al:A randomised, double-blind, sham-controlled study of granulocyte/monocyte apheresis for moderate to severe Crohn's disease. Gut 2013;62(9):1288-94