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日本アフェレシス学会雑誌:5-3-23 循環器疾患領域:拡張型心筋症

5-3-23 循環器疾患領域
拡張型心筋症
アフェレシスの方法 ①:IAPP,②:DFPP,③:PE
アフェレシスの目的 心抑制性抗心筋自己抗体の完全除去
推奨レベル ①:1B,②:1C,③:2B
カテゴリー ①:II,②:II,③:III
文献的報告数 RCT CT CS CR
①:4,②:0,③:0 ①:11,②:0,③:0 ①:17,②:2,③:2 ①:0,②:2,③:2
疾患概念
 重症心不全を来す難病の心筋疾患である.遺伝因子を背景とし,ウイルス感染を契機として生じる自己免疫異常が病因と想定される.9割以上の症例で何らかの自己抗原(ミオシン,β1受容体,M2受容体,Na-K-ATPase,トロポニンIなど)に対する自己抗体(IgG)が検出される.

最新の治療状況
 利尿剤(トルバプタン含),アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬(もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker:ARB)),β遮断薬,抗アルドステロン薬のほか,ジキタリス,抗凝固療法(直接経口抗凝固剤,ワーファリン),抗不整脈薬(アミオダロン等)が使用される.非薬物治療として,左室同期不全例や心室頻拍に対するCRT-D植込術や,補助循環としてventricular assist device(VAD)があるが,心臓移植が最終治療となる.

アフェレシスの根拠
 欧米多施設の無作為化二重盲検試験が進行中である.自己抗体IgGが,心筋細胞膜上の自己抗原とFcγ受容体IIaとに同時に接着することにより,陰性変力作用が発揮される.この「心抑制性抗心筋自己抗体」の完全除去が治療機序と想定される.奏効例(同自己抗体の陽性者)は欧米・本邦ともに約6割である.自覚症状(NYHA分類,最大酸素摂取量,運動耐容能)の改善,治療前後の血行動態が改善,1クール後には血漿BNP値も低下する.施行3か月後には左室駆出率が改善し,長期予後改善効果も報告されている.治療例はIAPPが最多で,本邦からDFPPやPE(小児例)の報告もある.

施行上のポイント
 心筋自己抗体(特に「心抑制性抗心筋自己抗体」)が陽性の症例に治療効果が期待される.ACE阻害薬が心不全治療にとって必須であるが,イムソーバTRカラムを使用した免疫吸着療法を行う場合には禁忌,治療前にACE阻害薬からARBへの切り替えが必要である.本邦では治験,先進医療Bが実施済であるが,保険未承認治療である.

施行回数・終了のめやす
 通常のアフェレシス手技に準じる.イムソーバTRによるIAPPの場合,1回の血漿処理量1.5Lとし,1クールあたり3~5回を実施する.最短3月後ごとに,心筋自己抗体が消失するまで同クールを繰り返して実施する.病状再燃時に治療を再開することも可能である.

保険適用*   無

文   献
 1) Moriguchi T, Koizumi K, Matsuda K, et al:Plasma exchange for the patients with dilated cardiomyopathy in children is safe and effective in improving both cardiac function and daily activities. J Artif Organs 2017;20:236-43
 2) Yoshikawa T, Baba A, Akaishi M, et al:Immunoadsorption therapy for dilated cardiomyopathy using tryptophan column-A prospective, multicenter, randomized, within-patient and parallel-group comparative study to evaluate efficacy and safety. J Clin Apher 2016;31:141-50