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日本アフェレシス学会雑誌:5-1-24 循環器疾患領域:バージャー病

5-1-24 循環器疾患領域
バージャー病
アフェレシスの方法 LDL-A
アフェレシスの目的 末梢循環の改善
推奨レベル 1C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 1 7 1
疾患概念
 若年男性の喫煙者に好発する四肢の慢性閉塞性動脈疾患である.動脈硬化症と異なり,四肢末梢の中型動脈で分節的に血栓閉塞性の血管全層炎を生じ,虚血症状として間欠性跛行・安静時疼痛や足趾・手指の潰瘍・壊疽を引き起こす.しばしば表在静脈にも血栓性静脈炎(遊走性静脈炎)を生じる.自己免疫応答異常や歯周病菌の関与が指摘されているが,原因は未だ不明である.喫煙との関連が強く,血管攣縮が発症誘因と考えられている.

最新の治療状況
 受動喫煙の回避を含めた禁煙の厳守,患肢の保温・保護,歩行訓練・運動療法を行う.薬物療法として,血小板薬・抗凝固薬の投与,プロスタグランジンE1製剤静注などが行われる.重症患者に対して血行再建術が考慮され,交感神経節切除術などを行うこともある.骨髄及び末梢血幹細胞分離・移植による血管新生療法は有効で,閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)に準じてLDL-Aも実施される(両者とも保険未収載).

アフェレシスの根拠
 当疾患を含む慢性閉塞性動脈疾患に対するLDL-Aの有効性は認められているが,当疾患のみを比較・検討した報告はない.作用機序として,血液粘度や血管内皮機能の改善,血管拡張作用,白血球接着因子発現やサイトカイン産生抑制などの抗炎症作用,hepatocyte growth factor(HGF)やvascular endothelial growth factor(VEGF)などの血管成長因子の産生,側副血行路の増加,酸化ストレス抑制などが確認されている.

施行上のポイント
 ASOに対するLDL-Aに準じる.リボソーバーLA15を用いたLDL-Aを行う際,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)阻害薬の服用により血圧低下・ショックを来す可能性がある.LDL-Aによりフィブリノゲンもある程度除去されるため出血傾向にも注意する.また,DFPPで行うこともある.

施行回数・終了のめやす
 ASOに対するLDL-Aに準じる.週1~2回のペースで10回を目処に実施する.著明な血圧低下がみられる場合や出血傾向が出現する場合には中止する.

保険適用*   無

文   献
 1) Kim DI, Kim MJ, Joh JH, et al:Angiogenesis facilitated by autologous whole bone marrow stem cell transplantation for Buerger's disease. Stem Cells 2006;24:1194-200
 2) Boda Z, Udvardy M, Rázsó K, et al:Stem cell therapy:a promising and prospective approach in the treatment of patients with severe Buerger's disease. Clin Appl Thromb Hemost 2009;15:552-60
 3) Heo SH, Park YS, Kang ES, et al:Early results of clinical application of autologous whole bone marrow stem cell transplantation for critical limb ischemia with Buerger's disease. Sci Rep 2016;6:19690
 4) Moriya J, Minamino T, Tateno K, et al:Long-term outcome of therapeutic neovascularization using peripheral blood mononuclear cells for limb ischemia. Circ Cardiovasc Interv 2009;2:245-54
 5) 山田卓史,高木正剛,藤井卓,他:虚血性心疾患および慢性動脈閉塞症の術後LDL-apheresis療法の有用性.人工臓器1993;22:248-52