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日本アフェレシス学会雑誌:2-5-15 血液疾患領域:血液型不適合妊娠

2-5-15 血液疾患領域
血液型不適合妊娠
アフェレシスの方法 PE,IAPP,DFPP
アフェレシスの目的 抗赤血球抗体除去
推奨レベル 2C
カテゴリー II
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 0 13 27
疾患概念
 母児間で血液型不適合がある場合に,何らかの理由で母体の血液中に児の赤血球に対するIgG性の抗体が生じ,胎盤を通じて児の赤血球に溶血を生じ,胎児貧血による心不全,胎児水腫を生じる病態である.

最新の治療状況
 胎児の貧血による胎児水腫が問題となるため,貧血の改善が重要である.18~20週以降は子宮内胎児輸血が行われる.18~20週まで,もしくは手技的に困難な場合は,アフェレシスによる母体の抗体の除去,免疫グロブリン製剤大量投与による抗体移行の低減が図られる.貧血の進行は,超音波ドップラーによる中大脳動脈のpeak systolic velocitiesなどをモニターし判断する.

アフェレシスの根拠
 胎児赤血球に対するIgG性抗体が,母体血より胎盤を通じて流入することによって溶血性貧血が生じる.母体側のIgGを各種のアフェレシスで除去することで,胎児側に流入する抗体量を減少させることを目的とする治療.胎児死亡の既往のある妊娠を,PEのみで管理し得た報告が散見される.

施行上のポイント
 PEの置換液はアルブミン製剤で問題ない.1回量は1~1.5循環血漿量.治療開始時期は,前回までの既往歴を参考に決定する.DFPPも除去効率は落ちるが,抗体価を見ながら実施可能である.過去に対応赤血球を吸着材とする免疫吸着の報告があるが,現在は実施されていない.

施行回数・終了のめやす
 通常は,在胎18~20週になり子宮内胎児輸血が可能になるまで行う.週2~3回,抗体価の動きを見ながら実施する.我が国では保険適用はないが,十分抗体価を下げたのちに,免疫グロブリン製剤の大量使用で抗体の胎児への移行を抑制する方法も併用されることがある.

保険適用*   有
 当該療法の対象となる重度血液型不適合妊娠とは,Rh式血液型不適合妊娠による胎内胎児仮死または新生児黄疸の既往があり,かつ,間接クームス試験が妊娠20週未満にあっては64倍以上,妊娠20週以上にあっては128倍以上であるものをいう.

文   献
 1) Ruma MS, Moise KJ, Kim E, et al:Combined plasmapheresis and intravenous immune globulin for the treatment of severe maternal red cell alloimmunization. Am J Obstet Gynecol 2007;196:138. e1-e6
 2) Mari G, Deter RL, Carpenter RL, et al:Noninvasive diagnosis by Doppler ultrasonography of fetal anemia due to maternal red-cell alloimmunization. Collaborative group for Doppler assessment of the blood velocity in anemic fetuses. N Engl J Med 2000;342:9-14
 3) 長町典夫,武本幹彦,橋本公,他:重要RhD感作妊婦の血漿交換療法(二重濾過血漿交換DFPP).周産期医学 1989;19:405-9
 4) 浮田昌彦,矢切良穂,上田恭典:母児免疫疾患に対する血漿交換療法(抗体除去療法).周産期医学 1989;19:59-66
 5) Angela E, Robinson E, Tovey LA:Intensive plasma exchange in the management of severe Rh disease. Br J Haematol 1980;45:621-31
 6) Graham-PoleJ, Barr W, Willoughby ML:Continuous-flow plasmapheresis in management of severe rhesus disease. Br Med J 1977;1:1185-8
 7) Fraser ID, Bothamley JE, Bennet MO, et al:Intensive antenatal plasmapheresis in severe rhesus isoimmunization. Lancet 1976;1:6-8