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日本アフェレシス学会雑誌:2-3-11改 血液疾患領域:過粘稠症候群

2-3-11改 血液疾患領域
過粘稠症候群
アフェレシスの方法 PE,DFPP
アフェレシスの目的 過剰な免疫グロブリンの除去
推奨レベル 1B
カテゴリー I
文献的報告数 RCT CT CS CR
0 3 19 NA
疾患概念
 免疫グロブリンの主に単クローン性増加によって,血漿の粘度上昇と赤血球の凝集が生じ血液粘度が上昇し,出血傾向,眼底の静脈怒張,眼底出血,頭痛,めまい,聴力障害など様々な症状を呈する病態で,マクログロブリン血症でIgM>3~4g/dL,多発性骨髄腫で重合したIgA>6~7g/dL,IgG3>4~5g/dLで生じる可能性がある.1950年代にアフェレシスの有効性が報告された病態である.

最新の治療状況
 過粘稠症候群に対しては,血漿交換療法が第一選択となるが,背景となる疾患の治療を同時に行う.単クローン性IgMを産生する原発性マクログロブリン血症は,進行の緩徐な非ホジキンリンパ腫として,IgA,IgG3を産生する場合には,多発性骨髄腫に対する治療を行う.

アフェレシスの根拠
 直接過粘稠症候群の原因となっている,過剰な単クローン性免疫グロブリンを除去する.特にIgMは80%が血管内にあり除去効率にすぐれているとともに,少量の除去で粘度の低下を認め,速やかに症状は改善するとされる.症例報告は多数存在する.

施行上のポイント
 過粘稠症候群は,過粘稠による出血傾向を呈するので,眼底所見等で速やかに診断し,アルブミンを置換液とする血漿交換を行う.1~1.5循環血漿量の置換を行う.血液粘度の低下は速やかである.DFPPは,除去効率の悪化と,膜の目詰まりに注意する必要がある.

施行回数・終了のめやす
 症状が改善するまで連日施行する.同時に原疾患をコントロールするための化学療法が併用される.化学療法で十分に症状がコントロールできない場合には,免疫グロブリン値を見ながら,維持療法として,一定間隔で実施する場合もある.

保険適用*   有
 当該療法の対象となる多発性骨髄腫,マクログロブリン血症の実施回数は,一連につき週1回を限度として3月間に限って算定する.

文   献
 1) Kwaan HC:Hyperviscosity in plasma cell dyscrassias. Clin Hemorheol Microcirc 2013;55:75-83
 2) Stone MJ, Bogen SA:Evidence-based focused review of management of hyperviscosity syndrome. Blood 2012;119:2205-8
 3) Ansell SM, Kyle RA, Reeder CB:Diagnosis and management of Waldenström's macroglobulinemia:Mayo stratification of macroglobulinemia and risk-adapted therapy (mSMART) guidelines. Mayo Clin Proc 2010;85:824-33
 4) Hoffkes HG, Heemann UW, Tschendorf C, et al:Hyperviscosity syndrome:efficacy and comparison of plasma exchange by plasma separation and cascade filtration in patients with immunocytoma of Wardenstrom's type. Clin Nephrol 1995;43:335-8
 5) Adams WS, Blahd WH, Bassett SH:A method of human plasmapheresis. Proc Soc Exp Biol Med 1952;80:377-9