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日本アフェレシス学会雑誌:序 文

序 文
 アフェレシス療法が対象となる疾患は難治性かつ希少疾患が多く,また患者背景やアフェレシス療法開始までの治療経過が個々の症例において異なっているなどの特徴がある.そのため大規模なランダム化比較試験が行いにくく,質の高いエビデンスの確保が困難である.その様な状況のなか,2007年にAmerican Society for Apheresis(ASFA)よりガイドラインが発刊され,以後改訂され2019年には最新版が発刊されている.ASFAのガイドラインは非常にまとまったガイドラインである.しかし,米国では遠心分離法を用いたアフェレシスが中心であり,対象疾患及びその背景も我が国と異なっているため,ASFAのガイドラインを我が国に持ち込むことは,多くの問題点がある.
 我が国のアフェレシスの特長として,double filtration plasmapheresis(DFPP),selective plasma exchange(SePE)など中空糸型血液浄化器を用いた治療法やエンドトキシン吸着カラムなどの吸着型血液浄化器を用いた治療法が発達している.そのため2016年,松尾秀徳前理事長のもと,日本の実情にあった日本版アフェレシス治療ガイドラインの作成が始まった.
 本ガイドラインには,アフェレシス療法に精通している救急疾患,血液疾患,膠原病・リウマチ性疾患,呼吸器疾患,循環器疾患,消化器疾患,神経疾患,腎臓疾患,皮膚疾患のアフェレシス治療に精通したエキスパートが集い,86疾患を対象とした.またアフェレシス療法は医師のみならず,臨床工学技士,看護師,栄養士など多職種が関与するため,ベッドサイドで簡易に理解できるようにワークシート形式で作成した.臨床面のみならず,本ガイドラインは日本のアフェレシス療法を取りまとめることにより,日本のアフェレシス技術を世界に発信し,更なる我が国のアフェレシスを発展させることも目的である.
 日々,診断及び治療技術が進歩するため,本ガイドラインも今後数年ごとに改訂する必要がある.日本のアフェレシス療法を質の高いものとするためには,2020年4月より開始された日本アフェレシス学会レジストリと本ガイドラインが両輪となるものと考える.
 最後に,個々の患者さんのためにベストを尽くすために本ガイドラインが使用されることを希望する.

日本アフェレシス学会ガイドライン作成委員会 委員長
岩手医科大学泌尿器科学講座

阿 部 貴 弥