研修会実行委員長 峰島三千男
第6回研修会オーガナイザー 佐藤元美
若手の医師、看護師、臨床工学技士などを対象にアフェレシスに関する基礎的な知識と技術の習得を目的として、実際のアフェレシス機器を用いた第6回アフェレシス研修会を、本年7月6日(金)、7日(土)、8日(日)に福岡県久留米市に於いて開催しました。
その概要は以下の通りです。
記
1)日時:2018年7月6日(金) 17:00~19:30
7月7日(土) 9:00~16:40(懇親会18:30~20:30)
7月8日(日) 9:00~12:00
2)場所:天神会新古賀病院東館
3)参加費:会員:医師 25,000円, 医師以外 20,000円
非会員:医師 35,000円, 医師以外 30,000円
(研修費、テキスト料、7/7昼食、懇親会費を含む)
4)プログラム
【講義】2018年7月6日(金)17:00~19:30
1. アフェレシス療法の歴史と展望
岩手医科大学 阿部貴弥
2. アフェレシスの基礎原理(遠心分離・膜分離・吸着)
東京女子医科大学 花房規男
3. アフェレシス治療の実際(具体的な処方を含めて)
新城市民病院 佐藤元美
4. 研修対象機器・装置の特徴
帝京短期大学 松金隆夫
5. アフェレシス関連機器とトラブル対応
天神会 岩本ひとみ
【実習】2018年7月7日(土)9:00~16:40
1. 協賛企業による講義(9:00~10:15)
2. 協賛企業の機器を使用しての研修
(10:25~16:40, 昼休み 12:30〜13:30)
①旭化成メディカル株式会社:ACH-Σ(血液浄化装置):DFPP(sPEを含む)
②旭化成メディカル株式会社:ACH-Σ(血液浄化装置):CART
③株式会社カネカメディックス:MA-03(血漿浄化装置):LDL-apheresis
④テルモBCT株式会社:Spectra Optia(遠心型血液成分分離装置):遠心分離法
⑤東レ・メディカル:TR 55X-Ⅱ(血液浄化用装置)
日本ライフライン:AcuFil Multi 55X-Ⅱ(血液浄化装置):CHDF
⑥株式会社JIMRO:アダモニターMM6-N~施行の実際:GCAP(紹介のみ)
*60分毎にグループ単位でローテーションし、上記5社より指導のもと、全ての機器を体験していただきました。
*終了後、18:30〜20:30懇親会を開催しました。
【グループミーティング】2018年7月8日(日)9:00~11:30(担当:佐藤元美)
今回より、討論のためのアフェレシス症例を各領域の先生方に用意していただきました。昨年同様に初日にグループ分けと症例の紹介を行ったため、天候の影響などで時間的に余裕がなかったものの休憩時間などを使って意見交換が適宜なされたようです。当日、症例を用意された各先生の進行で、グループ代表者による発表の後に参加者全員で詳細について議論しました。
なお、アフェレシス症例を用意された先生は以下の通りです。
・東京女子医科大学 花房規男 先生: CART
・岩手医科大学 阿部貴弥 先生: CHDF
・村上華林堂病院 村田敏晃 先生: LDLアフェレシス
・兵庫医科大学 横山陽子 先生:GMA
・金沢医療センター 北川清樹 先生:PE
総合討論では、アフェレシス治療施行時のバスキュラーアクセスについての追加発言がありました。末梢静脈でも十分に治療可能ですが、脱水や血管がもともと細い場合には穿刺自体に難渋することも多く、その際に血管エコーと長針のエラスターを使用して太い静脈に針先が届くように肘部〜上腕の静脈に穿刺することで血流が確保できるとのことでした。また、アフェレシス治療では様々な要因で膠質浸透圧が変化する場合があり低血圧の原因となります。施行時に連続ヘマトクリットモニタ法により血液量の変化をモニタリングする有用性が再確認されました。
今回も、具体的な治療条件や手技において施設により相違のみられることが確認されました。今後、学会が中心となり治療の標準化を図っていくことが重要と思われます。
5)アンケート結果
参加者数は19名(アンケート回収 18名)で、内訳は医師 2名(アンケート未回収 1名), 看護師 1名, 臨床工学技士 16名でした。また、14名(約7割)が九州・四国・沖縄地区からの参加でした。
a)本研修会を知ったのは?
学会HP 8名、職場 9名、学術大会 1名
b)講義内容について(欠席 4名)
とても満足 5名、満足 9 名、普通・不満・とても不満 0名
基礎から応用まで様々な先生が教えて下さりとても有意義な時 間だった、基本的なことから分かりやすい説明だった、等。
c)実習内容について
とても満足 11名、満足 6名、普通 1名、不満・とても不満 0名
色々な装置・治療の説明を体験できてよかった、使用したこと がない機器などにも触れることができてよかった、様々な機械の説明が丁寧で分かりやすかった、等。
d)グループミーティングについて(欠席 2名)
とても満足 6名、満足 8名、普通 1名、不満 1名、とても不満 0名
実際にあった症例から治療法を考えることがとても刺激的だった、自身の知識不足由に分からない事が多く自身をもっと見直したく感じた、他の施設の情報が分かり非常によかった、他の人の考察など聞けてよかった、時間に余裕がなかった、専門的になって少し難しかった、等。
e)テキストについて
とても満足 10名、満足 8 名、普通・不満・とても不満 0名
機器の操作法も含め後から見直してもとても役にたつ資料と感じた、基礎から機器マニュアルまで網羅されていたので大変よかった。細かい内容まで記載されていてとても分かりやすかった、等。
f)講義および実習で取り上げて欲しいテーマ
・ガイドラインについて
・PDF・cPDFなど肝不全に対する治療法
・膜等の説明・選択について
・ドナーフェレシス、末梢血幹細胞採取法
・血漿吸着法やDFPP・選択的血漿交換についての詳しい講義
g)今後、アフェレシス研修会への参加を同僚に勧めたいと思いますか?
勧める 16名、どちらでも 1名、勧めない 0名、未記入 1名
h)ご意見・ご感想など
・他の施設では浄化だけではなく他の治療法や患者管理まで関わっておりとても刺激になった。また、最新の機種も見ることができとても勉強になった。
・講義を聴いたが知っているようで知らない事が多かった。他施設との情報交換の時間が多かったことが非常に良かった。
・様々なスタッフの意見が聞けて勉強になった。
・遠心分離器を用いた治療条件など、詳しく知りたい。
・遠心分離法はとても興味深かった。また、班のメンバーと病院での治療方法などディスカッションができ、よい経験ができた。現在、件数としては少ないが、院内のスタッフと情報を共有し意識を高めて行こうと思っている。
・いろいろな装置の歴史から操作方法、プライミング方法を丁寧に教えていただき、とても勉強になった。また、膜を使用しない遠心法での血液浄化はとても興味を持った。
6)所感
今回、記録的な大雨のために、何人かの講師や参加者が初日の開始時刻までに会場に到着できませんでした。そのため、一部の講義を他の先生がピンチヒッターとして代講するなど現場は大変でした。それでも、2日目には参加者が全て揃い、スタッフ一同、胸をなでおろした次第です。
前述のアンケート結果が示すように、講義・実習およびグループミーティングの全てにおいて参加者全員から高評価をいただき、研修会として成功であったと考えております。これも、岩本ひとみ先生をはじめとする会場世話人の皆さん、わかりやすい講義をしてくださった講師の先生、熱心に実技指導された協賛企業の皆さんのご尽力の賜物と厚く感謝申し上げます。
最後に、2年連続で研修会に参加された臨床工学技士の方から印象記をいただきましたので以下に掲載いたします。来年も同様の内容で第7回アフェレシス研修会を開催いたしますので、皆さん、奮ってご参加ください。
岡本玉実(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)
2018年7月6日~8日、福岡県久留米市の新古賀病院にて第6回 アフェレシス研修会が開催されました。この研修会へは昨年初めて参加したのですが、前回の研修会があまりにも楽し過ぎて、また、たくさんの【知恵】と【出逢い】を頂きたく2年連続(リピーター?)の参加となりました。今回も参加者は医師・看護師・臨床工学技士と多職種で、入職後数年の若い方から私のような技士歴20数年の者、もっと先輩の方々までおられました。
初日はアフェレシス療法の様々な仕様や治療方法に関しての講義が行われました。
2日目の協賛企業による講義と実際の機器を使用しての研修では、現在所属している施設で使用している装置もありましたが、学生や新人の頃以来触れていない装置が時を経て進化した後継機種もあり、久しぶりに触れることができました。旭化成メディカル社製のACH-∑を使用してのDFPPとCART、カネカメディックス社製のMA-03を使用してのLDLアフェレシス、テルモBCT社製のSpectra Optiaを使用しての遠心分離による血漿交換、東レ・メディカル社製のTR55X-Ⅱを使用してのCHDF、JIMRO社製のGMAについての組み立てや施行の実際(講義のみ)についての研修がありました。
この日の研修は実機を前にセッティングやプライミングをさせて頂くことができ、メーカーさんへ日頃は素朴過ぎて聞けないような事から、かなりマニアックな内容まで質問することが可能です。3日目の症例検討を行う3~4人のメンバーがグループとなって順番に各社の説明等を聞いたり実際に装置に触れたりするので、初めてお会いする参加者の方々とも打ち解けることができる、とても和やかな楽しい時間で、あっという間に時が過ぎていきます。
3日目はいよいよ症例検討発表となります。あらかじめ各グループに与えられた症例(今回は・・・家族性高コレステロール血症、急性腎障害、胃がん腹膜播種、潰瘍性大腸炎、急性進行性糸球体腎炎)に対して、①治療のモダリティ ②バスキュラーアクセス ③血液浄化装置 ④血液浄化器 ⑤治療量の設定 ⑥抗凝固剤 ⑦血流量などの流量設定 ⑧治療回数・頻度、を検討し発表していきます。テーブルごとに着席したままの発表形式なので、緊張も少なく和やかな雰囲気で、他のグループが発表している内容に対して沢山の質問が飛び交います。全てのグループの発表が終了したら、コーディネーターの先生も含めて全体でのディスカッションが行われます。ほかの施設での使用方法やトラブル対処方法、たくさんの【知恵】を頂ける時間でもあり、この研修会の中で私が1番楽しく感じる時間です。
日々進化していく医療の中でアフェレシスにも様々な治療方法があり、同じ疾患でも場面によって適切な治療や対処を選択することが必要とされます。自分が経験した事だけでなく、他の施設の方々の経験等を聞き、マニュアルの確認を行うことで、再度の学びとなり今後のアフェレシス治療へ活かすことができると思います。
私にとってこの『アフェレシス研修会』は楽しみながら学び、自分の知識を再確認することのできる場でもあります。今年も更にたくさんの【知恵】を頂くことができ、また、たくさんの方々との【出逢い】がありました。今回は天候等の都合もあり、懇親会への参加がかなわなかったので、次回は懇親会への参加を絶対条件としてアフェレシス研修会へ参加したいと思っています。また、若い後輩達にもアフェレシス研修会への参加を勧めていこうと思います。
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