研修会実行委員 峰島三千男、花房 規男
若手の医師、看護師、臨床工学技士などを対象にアフェレシスに関する基礎的な知識・技術の習得を目的として、実際のアフェレシス機器を用いた第5回アフェレシス研修会を、本年6月30日(金)、7月1日(土)、2日(日)、第4回研修会を福岡県久留米市にて開催しました。その概要は以下の通りです。
記
1)日時:2017年6月30日(金) 17:00~19:30
7月1日(土) 9:00~17:30 (懇親会18:30~20:30)
7月3日(日) 9:00~12:00
2)場所:天神会新古賀病院東館
3)参加費: 会員:医師40,000円、医師以外 20,000円
非会員:医師60,000円、医師以外40,000円
(研修費、ホテル宿泊費(6/30、7/1、2泊朝食付き)、7/1昼食、懇親会費を含む
実習風景
グループミーティング
集合写真
花房 規男(東京女子医科大学)
はじめに
アフェレシス研修会の3日目には,例年通りグループディスカッションを行った.ハンズオンで研修した5つの治療法が適応となる症例についてその治療条件を5つのグループにわかれて検討し,発表したあと全体でディスカッションを行った.グループ分けはハンズオンと同じメンバーとした.初日にグループ分けを発表し,症例についても同時に発表していたことから,2日目のハンズオン後には,各班に分かれて活発なディスカッションが行われた.さらには,前日の懇親会でも親交が深められ活発な討議がなされた.以下に,各治療法において,ディスカッションされた内容についてご紹介したい.
LDL吸着
一つ目の症例提示は,巣状糸球体硬化症に対するLDL吸着であった.治療条件については,処理量については1~1.5PVとする意見が多かったが,3~3.5Lと処理量は一律とするという施設もあった.家族性高コレステロール血症で,トリグリセリドも高いような場合には,血漿分離膜が詰まりやすいので,膜面積が大きな膜がよいかもしれないという意見があった.また,MA-03を平素は準備されていない場合には,処理量はやや少なくなるものの,LA-40Sでまず治療を行い,MA-03が準備できてからMA-03システムへ移行するとスムースに治療を行うことができるという意見があった.安全管理について,ACE阻害薬がLDL吸着では禁忌であるが,受け持ち科との情報共有,さらには治療者側でも毎回内服がないかどうかについて確認することが必要ということが確認された.
CRRT
次に,泌尿器科領域からの敗血症に対するCRRTの治療条件の設定について議論がなされた.セプザイリスとPMMAとの使い分けが議論の対象になった.敗血症の場合には,いずれかの膜を用いることが多いが,PMMAの場合には,限界濾過量が低いことが問題かもしれない.セプザイリスでは,ナファモスタットメシル酸塩は吸着されてしまうため,ヘパリンで行うこともあるという意見があった.なお,比較的長期間のCRRT(4~5日程度の治療)によるカリウム・リンの低下に対する注意喚起があった.
一方,敗血症性ショックでは,エンドトキシン吸着療法(PMX)と直列で治療を行っているという報告もあった.PMXの有効性についての議論があったが,たとえば腸管穿孔であっても,開腹手術で穿孔部位が閉鎖されており,腹腔内洗浄が行われているなど感染源がコントロールされていることがポイントという意見があった.
CART
最低量,1回の腹水処理量について意見が交わされた.最低処理量は1.5~3L.ただし,肝性腹水では,一般的に処理後得られる濃縮腹水量が少ない傾向があるという意見があった.エンドトキシンが腹水中で検出された腹水では,こうしたエンドトキシンが再静注されるため,処理が禁忌とされている.しかし,実際にはエンドトキシンについては,あまり測定される施設は多くなく,測定していた施設でも検出される機会はほとんどないことが紹介された.適応の評価が十分に行われており,細菌性腹膜炎が除外されているものと思われた.細菌性腹膜炎の除外のためには,腹水中の白血球数,特に好中球が参考になる可能性が示された.血性腹水については,溶血の有無が処理を継続する上で重要であるが,濃縮後の腹水の色を確認する他に,原腹水中のカリウム濃度の測定が有用ではないかという意見があった.KM-CARTについては,複数の施設で行われており,有用な方法であるが,圧モニタ,リークテストなど今後の課題も存在する.
CAP
潰瘍性大腸炎に対するLCAPとGMAとの比較について議論となった.局所の炎症に関与する活性化したリンパ球が除去できることのメリットがLCAPにはあるかもしれないという意見があった.一方,GMAでは残血が少ないことが利点として考えられた.LCAP, GCAPの比較については,依頼される診療科・施設による違いがある可能性が示唆された.血流量は少ないが,潰瘍性大腸炎患者では,しばしば脱水を認めるため,確実なアクセスと血流を確保することがいずれの施設でも問題として挙げられた.脱水の解除については,治療前に500mlの輸液を行うという意見があった.
DFPP
今回はMuSK抗体陽性の重症筋無力症に対するアフェレシスの検討であり,IgG4サブクラスの自己抗体除去が治療目標とされる.こうしたアフェレシスでは,DFPPとアルブミン置換の単純血漿交換のいずれも選択が可能である.この二つのモダリティについてどちらを選択されるかが議論となった.病因物質が明確になっていて,IgG以上の分子量を持つ物質であれば,アルブミン使用量が少なくできるDFPPが良いかもしれないが,回路が複雑であり,各施設で慣れた方法がよいのかもしれない.補充液については,技術マニュアルのノモグラムが使われるが,このノモグラムは血漿成分分画器に2A を用いた20%のpartial discardでのみ使用可能であるという点が再確認された.いずれにしても,DFPPでは様々な要因で膠質浸透圧が変化するため,連続ヘマトクリットモニタを用いた血液量のモニタリングが重要であることが再確認された.また,アルブミン濃度も薄い場合の血圧低下のリスクに対して再度注意喚起がなされた.
SePE
近年広く行われるようになってきている選択的血漿交換(SePE)について,2施設から使用経験が紹介された.いずれもDFPPからの変更であったが,IgGの低下はDFPPとおおよそ同等で, フィブリノゲンの低下は軽微であり,凝固因子の低下に対する方策として有用性が紹介された.
まとめ
今回も各施設による具体的な治療には差異が存在することが明らかになった.今回のようなディスカッションを様々な場面で行い,治療の標準化が図られることが期待される.来年度以降も内容をさらにブラッシュアップし,意見交換の場を提供していきたい.
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