研修会実行委員 峰島三千男、花房 規男
若手の医師、看護師、臨床工学技士などを対象にアフェレシスに関する基礎的な知識・技術の習得を目的として、実際のアフェレシス機器を用いたアフェレシス研修会を企画し、本年7月1日(金)、2日(土)、3日(日)第4回研修会を札幌にて開催しました。その概要は以下の通りです。
記
1)日時:2016年7月1日(金17:00~19:30
7月2日(土) 9:00~17:30 (懇親会19:00~20:30)
7月3日(日) 9:00~12:00
2)場所:東京ドームホテル札幌、札幌北楡病院
3)参加費: 会員40,000円、非会員60,000円
(研修費、東京ドームホテル札幌宿泊費(7/1,2 2泊朝食付き)、7/2昼食、懇親会費を含む)
・研修項目
【講義】2016年7月1日(金) 17:00~19:30 於:東京ドームホテル札幌
1.アフェレシス療法の変遷と展望 長崎川棚医療センター 松尾 秀徳
2.アフェレシスの基礎原理(膜分離・吸着) 東京女子医科大学 花房 規男
3.各治療法と適応疾患 岩手医科大学 阿部 貴弥
4.アフェレシス治療の実際(具体的な処方を含めて)JCHO中京病院 佐藤 元美
5.アフェレシス関連機器とトラブル対応 古賀病院21 岩本ひとみ
【実技】2016年7月2日(土) 9:00~17:30 於:札幌北楡病院
1.協賛企業による講義(9:00~10:15)
2.協賛企業の機器を使用しての研修(10:25~17:30、昼休み12:30~13:30)
・旭化成メディカル:ACH−Σ(血液浄化装置) :CART
・カネカメディックス:MA-03(血漿浄化装置) :LDL-apheresis
・川澄化学工業:KM-9000(血液浄化用装置) :DF-thermo
・JIMRO:アダモニターMM6-N (血球細胞除去用装置) :GCAP
・東レ・メディカル:TR 55X(血液浄化用装置)
JUNKEN MEDICAL:Acufil Multi 55X-Ⅱ(血液浄化用装置) :CHDF
※グループ単位でローテーションし、全ての機器を体験していただきました。
終了後、18:30~20:30東京ドームホテル札幌にて懇親会を開催しました。
【グループミーティング】2016年7月3日(日) 9:00~12:00 於:札幌北楡病院(担当 花房 規男)
7月1日に提示された症例についてグループごとに治療条件等につきディスカッションしていただき、代表者によるプレゼンテーションならびに全員参加のミーティングを通じて、詳細について議論致しました。(「グループミーティングを担当して」を参照)
昨年の第3回ではグループミーティングを含む3日間の開催としましたが、今回も同様の開催としました。
下記アンケート結果にありますように、講義、実技、グループミーティングすべてにおいて参加者全員からはおおむね高評価をいただき、成功裏に終了できたものと自負しております。これも、米川 元樹先生をはじめとする札幌北楡病院のスタッフの皆様方、わかりやすい講義をしてくれた講師の先生方、充実した実習を実施していただいた協賛企業の皆様のご尽力のお陰と感謝申し上げます。来年も同様な内容の第5回研修会を開催致しますので、奮ってご参加いただきたいと存じます。
参加者数:16名
<アンケート結果>
1)アンケート回答者の職種内訳 医師:4名、看護師:2名、臨床工学技士:6名
2)本研修会を知ったきっかけ? 学会誌:1名、学会HP:6名、職場:4名、その他1名
3)講義内容について とても満足:11名、満足:0名、普通0名、不満・とても不満:0名
基礎から学べた。詳細な内容を幅広く聞くことができた。普段疑問に思っていることや聞けないことを、直接講師に聞くことができた。
4)実習内容について
とても満足:10名、満足:2名、普通・不満・とても不満:0名
当院にはない機器の研修ができた。勉強になった。
5)グループミーティングについて
とても満足:9名、満足:2名、普通:1名、不満・とても不満:0名
他施設の方と治療法などで情報交換できてよかった。積極的に意見を述べることができた。発表が苦手なので、発言ができなかった。
6)テキストについて
とても満足:10名、満足:1名、普通:1名、不満・とても不満:0名
復習に利用したい。
7)講義および実習で取り上げて欲しいテーマがありましたらご記入ください。
単純血漿交換、選択的血漿交換や急性肝不全に対する治療についても取り上げて欲しい。
8)第4回アフェレシス研修会への参加を同僚に勧めたいと思いますか?
勧める:12名、どちらとも言えない:0名、勧めない:0名
9)その他、ご感想やご意見など。
・ 幅広く学ぶことができ、勉強になった。
講義風景
実習風景
グループミーティング
花房 規男(東京女子医科大学)
昨年に引き続き,研修会最終日はグループミーティングが行われた.本年もコーディネーターを務める機会を頂いたので,ミーティングで討議された内容の記録と,今後参加される方々のために,当日の討議内容について,報告させていただきたい.
14人の参加者を5グループに分け,前日のハンズオンで操作を行った機器を対象として,LDL吸着,CRRT,CART,GMA,DFPPについて議論が行われた.昨年は当日のディスカッションの時間が10分間と短かったが,研修会の終了時刻を30分繰り下げたことから,ディスカッションの時間が20分間と十分得られたため,参加していた学会委員を交えた活発なグループミーティングが行われた.
LDL吸着については,血漿処理量と頻度について議論となった.血漿処理量は体格を考慮すること,頻度については,重症度を考慮する必要が意見として挙げられた.
CRRTについては,AN-69STをヘモフィルタとして使用した場合の抗凝固剤の投与法,CRRTとSLEDDなど他の治療法との相違について意見が交わされた.また,維持透析患者における脳出血時の血液浄化療法について,受け持ち科と血液浄化療法科との意見に差が見られることが紹介された.ナファモスタットメシル酸塩であってもCRRTでは出血が助長される可能性があり,効率を抑えた間欠透析が望ましいという意見の一致を見た.さらに,CRRTと関連し,阿部理事から,急性肝不全における血漿交換とHDF (online HDF)との使い分け,肝性昏睡に対するonline HDFの有用性について紹介があった.CRRTの際の低リン血症についても注意喚起がなされた.
CARTは,排液する腹水量について,全量排液でも血圧低下はみられないことが紹介された.処理可能な最低限の腹水量,発熱対策,抗凝固剤の投与についても意見が交わされた.
ここで一旦休憩を挟み,後半はGMA,DFPPについて意見が交わされた.
GMAについては,脱水が問題となる可能性,体重を考慮したより高用量の治療,アクセスについてはシングルニードルの有用性について紹介があった.
DFPPについては,血漿交換,免疫吸着との適応選択,補充液の決定法について意見が交わされた.原因物質が明らかである場合にはより選択的な免疫吸着,DFPPを行うことが望ましいことが確認された.補充液については,血漿交換時には,出血性合併症を認める場合,補充が必要な場合以外では,血液製剤の使用指針からもアルブミンの使用が望ましいことが紹介された.さらに,中心静脈カテーテル抜去時の出血リスクから同日抜去は避けた方がよいとの意見,また空気混入のリスクから密閉できるドレッシング材を使用することの必要性が示された.
最後に総合討論が行われ,日頃疑問に思われている内容について,施設・職種を越えた意見交換がなされた.ECMOからの脱返血の施行について問題提起がなされたが,可及的に避けるべきと言う意見があった.また,PMXについては,添付文書どおり2時間施行する以外に,24~48時間などより長時間行っている施設の経験が紹介されたが,こうした添付文書の記載を越えた治療を行う場合の倫理的な問題点についても指摘があった.さらに,アフェレシス専門医の地域偏在について考慮すべきで,今回の研修会を初めとするアフェレシス学会の取り組みへ期待されるという意見がなされた.
昨年に引き続き,二度目のグループミーティングであった.ディスカッションの対象となった治療は同じであるが,議論の詳細な内容は昨年と異なる部分も多く,具体的なアフェレシス療法の治療においては,依然として施設ごとの違いが存在すること,アフェレシス治療の標準化に向けた意見の集約が必要とされていることが再確認された.今後とも,同様のディスカッションの機会を設けていきたい.
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