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日本アフェレシス学会雑誌:1-1-2 救急疾患領域:重症敗血症及び敗血症性ショック

1-1-2 救急疾患領域
重症敗血症及び敗血症性ショック
アフェレシスの方法 AN69ST-CHDF
アフェレシスの目的 サイトカイン除去
推奨レベル なし
カテゴリー I
文献的報告数 RCT CT CS CR
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疾患概念
 敗血症は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」と定義される.侵襲(感染)に対する生体反応が調節不能な病態であり,生命を脅かす臓器障害を導く(過剰に産生されたcytokineが血中に流入し,高サイトカイン血症となり,それが重症化,遷延化することで,組織酸素代謝の失調やmediatorによる直接障害によって臓器不全,ショックに陥る病態).
 敗血症性ショックは,敗血症の一分症であり,「急性循環不全により細胞障害及び代謝異常が重度となり,死亡率を増加させる可能性のある状態」と定義される.

最新の治療状況
 適切な抗菌薬投与,IVIG,適切な輸液,循環作動薬,ステロイドなどを集学的に行う.

アフェレシスの根拠
 AN-69ST膜はサイトカインを吸着除去可能である.AN69ST-CHDFの有効性を検証した我が国の多施設前向き観察研究が行われ,28日死亡率の低下や開始後72時間目における血中乳酸値,サイトカイン(IL-1β,IL-6,IL-8,IL-10,TNF-α,HMGB1)の減少,平均血圧は上昇することが報告された.

施行上のポイント
 循環動態に影響が出ないように緩徐に施行する.

施行回数・終了のめやす
 7日間使用する.その前に回復した場合はその時点で終了する.

保険適用*   有

 1 入院中の患者以外の患者に対して,午後5時以降に開始した場合もしくは午後9時以降に終了した場合または休日に行った場合は,時間外・休日加算として,300点を所定点数に加算する.
 2 著しく持続緩徐式血液濾過が困難な障害者等に対して行った場合は,障害者等加算として,1日につき120点を加算する.
 3 持続緩徐式血液濾過を夜間に開始し,午前0時以降に終了した場合は,1日として算定する.
 4 区分番号J038に掲げる人工腎臓の実施回数と併せて1月に14回に限り算定する.ただし,区分番号J038に掲げる人工腎臓の注8に規定する別に厚生労働大臣が定める患者にあってはこの限りでない.
通知
 (1) 使用した特定保険医療材料については,持続緩徐式血液濾過器として算定する.
 (2) 持続緩徐式血液濾過は,次のアからケまでに掲げるいずれかの状態の患者に算定できる.ただし,キ及びクの場合にあっては一連につき概ね8回を限度とし,ケの場合にあっては一連につき月10回を限度として3月間に限って算定する.
 ア 末期腎不全の患者
 イ 急性腎障害と診断された高度代謝性アシドーシスの患者
 ウ 急性腎障害と診断された薬物中毒の患者
 エ 急性腎障害と診断された尿毒症の患者
 オ 急性腎障害と診断された電解質異常の患者
 カ 急性腎障害と診断された体液過剰状態の患者
 キ 急性膵炎診療ガイドライン2015において,持続緩徐式血液濾過の実施が推奨される重症急性膵炎の患者
 ク 重症敗血症の患者
 ケ 劇症肝炎または術後肝不全(劇症肝炎または術後肝不全と同程度の重症度を呈する急性肝不全を含む)の患者
 (3) (2)のアからカのいずれかに該当する場合は,診療報酬明細書の摘要欄に該当項目を記載すること.
 (4) (2)のキからケのいずれかに該当する場合は,診療報酬明細書の摘要欄に(2)のキからケまでのそれぞれについて,要件を満たす医学的根拠について記載すること.
 (5) 人工腎臓,腹膜灌流または持続緩徐式血液濾過を同1日に実施した場合は,主たるものの所定点数のみにより算定する.
 (6) 「注1」の加算を算定する場合は,区分番号「A000」初診料の注9及び区分番号「A001」再診料の注7に掲げる夜間・早朝等加算は算定しない.
 (7) 持続緩徐式血液濾過を夜間に開始した場合とは,午後6時以降に開始した場合をいい,終了した時間が午前0時以降であっても,1日として算定する.ただし,夜間に持続緩徐式血液濾過を開始し,12時間以上継続して行った場合は,2日として算定する.
 (8) 妊娠中の患者以外の患者に対し,持続緩徐式血液濾過と人工腎臓を併せて1月に15回以上実施した場合(持続緩徐式血液濾過のみを15回以上実施した場合を含む)は,15回目以降の持続緩徐式血液濾過または人工腎臓は算定できない.ただし,薬剤料または特定保険医療材料料は別に算定できる.

文   献
 1) 平澤博之:重症敗血症/敗血症性ショックの今日的病態生理と持続的血液濾過透析(CHDF)によるその制御.日救急医会誌2011;22:85-116
 2) Hirasawa H, Oda S, Nakamura M, et al:Continuous hemodiafiltration with a cytokine-adsorbing hemofilter for sepsis. Blood Purif 2012;34:164-70
 3) 平澤博之:敗血症の病態生理と診療の最近の話題.日腹部救急医誌2014;34:815-22
 4) Shiga H, Hirasawa H, Nishida O, et al:Continuous hemodiafiltration with a cytokine―adsorbing hemofilter in patients with septic shock:a preliminary report. Blood Purif 2014;38:211-8