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アフェレシスの方法は?

 アフェレシスには遠心分離法と膜分離法があり、わが国では医用工学技術の進歩を背景に膜分離によるプラスマフェレシスが一般的となっています。ここでは代表的な膜分離方式および吸着方式によるアフェレシス治療の方法について概略を紹介します。

膜分離方式

1.単純血漿交換法(Plasma exchange: PE)

 血液は赤血球や白血球などの血球成分と血漿から構成されており、アフェレシスの適応となる病気の原因物質(病因関連物質)はこの血漿中に存在します。単純血漿交換は中空糸状の濾過膜(膜型血漿分離器)を用いて血球成分と血漿を分離し、病因物質を含む血漿を廃棄するとともに新鮮凍結血漿や5%アルブミン加乳酸リンゲルと置換する方法であり、通常、2~4Lの血漿が除去されます。本法では血球成分以外の全ての血漿が廃棄されるため、大分子から小分子にいたる幅広い病因物質を除去できることが特徴です(図3)。しかしながら一方では置換補充液として用いる新鮮凍結血漿に起因する感染症発症のリスクや低Ca血症に留意が必要となります。

図3 単純血漿交換法

単純血漿交換法

2.二重膜濾過血漿交換法(Double filtration plasmapheresis: DFPP)

 本法では、単純血漿交換法で使用する血漿分離器(一次膜)で分離された血漿成分をさらに病因関連物質の選択的除去を目的として血漿分画器(二次膜)を用いて濾過します。すなわち一次膜で濾過されなかった血球成分と二次膜で濾過された病因物質を含まない濾過液は体内へ戻され、二次膜で濾過されなかった血漿成分中には病因関連物質が含まれるものとして廃棄されます(図4)。本法の特徴はアルブミンの損失を出来る限り抑制することにあります。しかしながらアルブミンとIgGの完全な分離は困難であり、病態によって異なるが低アルブミン血症を回避する目的から5~8%アルブミン加乳酸リンゲル液を補充液として用いるのが一般的です。さらに変法として一次膜により濾過された血漿成分を冷却することによりゲル化した病因関連物質を含む大分子物質、クライオゲル(Cryogel)を二次膜で除去する血漿冷却濾過法(Cryofiltration: CF)があります。

図4 二重膜濾過血漿交換法

二重膜濾過血漿交換法

吸着方式
 吸着療法は様々な吸着剤に全血を潅流する直接血液潅流法(Direct hemoperfusion: DHP)と分離血漿を潅流する血漿潅流法(Plasma perfusion: PP)に大別され、それぞれの成分中に含まれる病因(関連)物質を吸着除去します(図5、6)。さらに最近では治療特性を明確にするうえで血液吸着療法、血漿吸着療法さらに吸着式血球成分除去療法に分類されています。また一般に吸着療法ではカラムにより病因(関連)物質に対する吸着能に差があるため、一定の処理量を規定することは困難であり、病態に応じた対応が必要となります。

図5 直接血液潅流法 図6 血漿潅流法
直接血液潅流法. 血漿潅流法

1.血液吸着療法(Hemoadsorption: HA)

 血液吸着では血液中に抗凝固剤注入後、直接吸着カラムへ還流し、病因(関連)物質を除去した後に体内へ戻されます。HAに用いられる吸着剤としては治療目的により(1)活性炭(DHP-1、ヘモソーバ、ヘマックス、ヘモカラム)、(2)ポリミキシンB固定化吸着剤(トレミキシン)、(3)ヘキサジル其固定化セルロースビーズ(リクセル)などがあります。(表2

表2 血液吸着療法(HA)における吸着材
相互作用 作用力 リガンド 吸着対象物質 おもな適応疾患 商品
物理
化学的
静電
結合
ポリアクリル酸 LDL 高コレステロール
血症
DALI(国内販売なし)
疎水
結合
ヘキサデシル基 β2-ミクログロブリン 透析アミロイ
ドーシス
リクセル
(カネカメディックス)
石油ピッチ系
活性炭
薬物、
ビリルビン、
胆汁酸、
クレアチニン、
アミノ酸など
肝性昏睡、薬物中毒 DHP-1
(クラレメディカル)
ヘモソーバ
(旭化成メディカル)
ヘモカラム(テルモ)
複合的
結合
ポリミキシンB エンドトキシン 敗血症、
エンドトキシン血症
トレミキシン
(東レ・メディカル)

新版「アフェレシスマニュアル」P.90表1より引用

2.吸着式血球成分除去療法

 直接血液還流法で白血球系細胞を吸着除去する血液吸着法の一種であり、白血球除去療法とも呼ばれます。吸着材料にポリエチレンテレフタレート不織布を使用したもの(セルソーバEX)と酢酸セルロースビーズを用いたもの(アダカラム)があり、それぞれの吸着特性からLCAP(leukocytaphere)、GCAP(granulocytapheresis)といわれています。LCAPは血流50ml/minで約3000mlの血液を処理するのに対し、GCAPでは血流30ml/minで約1800mlの処理を行います(表3)。

表3 白血球除去療法における吸着材
吸着材形状 素材 商品名
繊維状吸着材 ポリエステル製超極細繊維
ポリエステル繊維
セルソーバE(旭化成メディカル)
ファインセル(旭化成メディカル)
ビーズ状吸着材 セルロースジアセテート) アダカラム(JIMRO

新版「アフェレシスマニュアル」P.91表3より引用

3.血漿吸着療法(Plasma adsorption: PA)

 血漿吸着療法は血漿分離膜で分離された病因(関連)物質を含む血漿成分は各種吸着カラムで病因(関連)物質を除去した後、血球成分とともに体内へ戻されます。現在、活性炭をはじめとして疎水的相互作用、静電的相互作用、抗原抗体反応、イオン結合などを利用した吸着材・吸着カラムが開発されており、各種病態に対して使用されています(表4)。

表4 血漿吸着療法(PA)における吸着材
相互作用 作用力 リガンド 吸着対象物質 おもな適応疾患 商品名
物理
化学的
静電結合 硫酸デキストラン LDL
抗DNA抗体など
高コレステロール血症 ポソーバー
(カネカメディックス)
全身エリテマトーデス セレソーブ
(カネカメディックス)
第四級
アンモニウム
ビリルビン、
胆汁酸など
術後肝不全、劇症肝炎 プラソーバBR
(旭化成メディカル)
疎水結合 石油ピッチ系
活性炭
昏睡物質、
ビリルビンなど
肝性昏睡、薬物中毒 プラソーバN
(旭化成メディカル)
複合的
結合
トリプトファン 抗アセチルコリン
抗体
免疫複合体など
自己免疫疾患 イムソーバTR
(旭化成メディカル)
フェニルアラニン リウマチ因子、
免疫複合体
抗DNA抗体など
膠原病
自己免疫疾患
イムソーバPH
(旭化成メディカル)
生物学的 抗原-
抗体結合
Terpedo α
183-200
抗アセチルコリン
受容体抗体
重症筋無力症 メディソーブMG
(クラレメディカル)
血液型抗原 抗A抗体 血液不適合腎移植 Biosynsorb A
(国内販売なし)
抗B抗体 血液不適合腎移植 Biosynsorb B
(国内販売なし)
抗LDL抗体 LDL 高コレステロール血症 Therasorb
(国内販売なし)
抗IgG抗体 IgG 凝固因子欠乏性疾患など Ig-Therasorb
(国内販売なし)
FC結合 protein A IgG 自己免疫疾患など Prosoba
(国内販売なし)

新版「アフェレシスマニュアル」P.90表2より引用